2007年07月28日

打越役、吉沢悠さん

 美容院で雑誌を見ていたら、今日から全国公開された『夕凪の街 桜の国』に打越役で出演した吉沢悠さんのインタビュー記事がありました。
 2005年4月ころから、1年間くらい俳優業を休んで留学していらしたんですね。そして、芸能活動を再開してからは、名前も吉沢悠(ゆう)から本名の吉沢悠(ひさし)に変えているとか。そうか、まったく知りませんでした。

 『夕凪の街 桜の国』の広島ロケは、この間劇場でもらってきた「ロケ地マップ」によると、2006年8月とありますから復帰後まもなくの撮影だったんでしょうか?
 うん、これでなんとなく納得。なんというか、スクリーンの打越さんは、本当に一般の人から出演者を募りましたと言われても納得してしまいそうな雰囲気でしたから。ほんとうに普通に町の中に働いて、歩いていそうな空気は、主演の女性陣二人とは違う意味で、魅力的でした。
ラベル:日記 日本映画
posted by あんく at 23:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月25日

『大仏破壊−ビンラディン、9・11へのプレリュード』

大仏破壊―ビンラディン、9・11へのプレリュード (文春文庫 た 63-1)
高木 徹
文藝春秋 (2007/04)
売り上げランキング: 159874


 数字に弱いせいか、物覚えが悪いのか、かなり大きな事件が起こってもその日にちや、年、時間といったものが覚えられません。それでも、9・11は鮮烈に覚えているのです。深夜近くに報じられたテロのニュース。ビルに飛び込む飛行機の映像は流れるものの、詳細が伝わってこずになにがなんだか分からないまま、一人でテレビを眺めていたときのなんともいえない気分がよみがえってきます。

 そしておりしも、武装勢力タリバンによる韓国人拉致のニュース。
 日本ではすっかり、アルカイダもタリバンも過去の出来事のようになっているものの、こういうニュースを聞くとアフガニスタンは依然、混沌の中にあるのだと痛感させられます。

 この本は、大仏破壊がなぜ行われたのか、またそこに至るアフガニスタンの情勢と、タリバンの変容が、当時その地域にかかわったさまざまな人たちへの取材をもとにつづられます。
 読み始めてまず気づいたのは、アルカイダという武装集団と、アフガニスタンの内部勢力であり政権をとったタリバンとの区別が、自分の中ではすでに曖昧になっていたことです。もちろん、中東情勢をしっかり把握して一連のニュースを見た人も多かったでしょうが、自分は独裁的な政権=テロ集団と混同したまま、今もってアフガニスタンにきちんを目を向けていなかったようです。

 タリバンがどのような活動を経て政権を握ったか、指導者であるオマルという人がどんな人物だったのか。それらは思った以上に、真摯で情熱的で、穏和な印象すら感じさせるものでした。
 しかし、実際にはバーミヤンでの大仏遺跡が破壊され、アメリカ同時多発テロ、さらにはアフガン攻撃という最悪のシナリオをたどってしまったものはなんだったのか。
 ニュースの鮮度が薄れると、アフガニスタンへの関心も低くなる。対岸の火事が、火事の存在すら気にしなくなっていたことに、否応なく気づかされます。

 当時のタリバン政権内部の人や、国連など、多くの関係者の言葉と、著者の分かりやすい文章で、堅い印象でありながら読み始めるととまらなくなる興味深さです。

 今も、タリバン政権の指導者であるオマル師行方不明のままといわれています。果たして彼は、今のアフガニスタンをどう見ているのでしょうか?
 
 
ラベル:読書 高木徹
posted by あんく at 21:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 著者別 さ〜た | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月22日

映画『夕凪の街 桜の国』

『夕凪の街 桜の国』(2007年・日本)
 監督:佐々部清
 出演:田中麗奈、麻生久美子、吉沢悠、堺正章、藤村志保


 非常に話題になった、こうの史代による同名コミックの映画化。

 前半の舞台になるのは、戦後の復興が進む昭和33年の広島。
 そして後半、平成19年。広島をめぐる旅でふたつの時代がつながってゆく。

 原作コミックは一度読んだだけですが、第一印象は原作のイメージを大切にしながら、丁寧で誠実につくられているなというものでした。

 特に前半、主人公である皆実(みなみ)が被爆による心の傷をかかえ、生きていたい、幸せでありたいと思いながらも、少しずつ死の淵にたぐり寄せられていく姿は涙なしには見られませんでした。

「原爆は落ちたんじゃない。落とされたんよ。だれかが死ねばいいと思って落とされたんよ。」と言った皆実。
 確かに事実ですが、一面的な見方に思えたし、そんなふうに考えたら自分がもっとしんどくなるのに、なぜそんなふうに考えるんだろう。それは、映画だけじゃなく、コミックを読んだときから感じていた違和感だったのかもしれませんが、なんとなくひっかかりを感じもしました。
 
 今の広島の街は当時とはすっかり変わり、目をこらさなければ原爆の痕跡など見あたりません。でも、当時は銭湯のシーンでも描かれていたように、当たり前に原爆を思い起こさせるものが日常的に存在していた。周りをみれば、ほとんどの人が戦争や原爆でなんらかの傷を負っている。そんな中で生きていたからこその、実感であり、幼くして被爆し、なにもない中で再び生き始めるための、皆実なりの必死の結論だったのでしょう。
 そう思うと、やっとひっかかりが薄らいだ気がします。

 前半でぐっと感情移入してしまったせいか、後半は思いの外淡々と見てしまいました。
 たぶん、20代にとって被爆世代は、親よりも祖父母世代のほうが多いという感覚が私にあるぶん、七波たちの年齢設定が気になってしかたなかったせいもあるでしょう。実際、物語を追いながら、登場人物たちの年齢を何回も足し引きしてました……。
 七波という現代の女性が、自分の過去を振り返るきっかけが、広島だったわけですが、そこに強い必然性のようなものは残念ながら感じられませんでした。
 後半にももっと涙を搾られるかと思っていたので、意外な気もしました。
 「泣ける」という惹句は嫌いですが、もう少し泣かせてほしかった気もします。

 とはいえ、原爆だけでなく、あの戦争で亡くなった多くの方々、そして苦しい時代を生き抜いてきた方々を思うきっかけになるであろう、誠実な作品であることは間違いないと思います。

夕凪の街桜の国
夕凪の街桜の国
posted with amazlet on 07.07.22
こうの 史代
双葉社 (2004/10)
売り上げランキング: 48



 劇中の広島弁、広島県人としては気になるところでしたが、みなさんお上手でした。もちろん、ところどころ違うかなと思うところはありますが、演じる方はずいぶん大変だったんじゃないかとお察しします。なかでも、打越役の吉沢悠さんはかなり自然な感じでした。強いていうなら、皆実を呼ぶときに「君」じゃなく「あんた」(←イントネーションは動物の「ラッコ」みたいな感じかな?)を使ってくれるとなおよかったかと。
 見慣れた風景がスクリーンに映るのは、なんだか不思議な気分でした。特に、市街地を(路面)電車が走る風景では、けっこう広島も都会に見えますね。
 
ラベル:映画 日本映画
posted by あんく at 18:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月16日

『香港の甘い豆腐』

香港の甘い豆腐
香港の甘い豆腐
posted with amazlet on 07.07.16
大島 真寿美
理論社 (2004/10)
売り上げランキング: 260809


 母と二人暮らしの彩美。高校を留年しそうになったとき、母が起こした行動は思いがけないものだった。亡くなったと聞かされていた父親に会うために、夏休み、めったなことでは仕事を休んでくれない母が、香港へ行くと言い出した。父親が生きている、しかも香港で。香港の街に立ち、歩き、食べ、彩美の足が地に着いていく時間を追体験するようなお話。

 タイトルは前から見知っていたし、手にも何度もとってみたのですが、そこに“香港”という言葉が含まれているというだけで敬遠してきました。思い入れ強い場所がどんなふうに描かれているのか、つい身構えてしまうんですね。自分のイメージとずれていたりすると、気になって物語に身が入らないし……なんて考える必要もなかった。

 しばらく香港にホームステイすると、日本で待つ祖母に伝える彩美が使った言葉は「元気の渦」でした。そう、香港にはなんだか分からないけれど、とてつもなくエネルギッシュな力があった。うん、確かに「元気の渦」なのです。
 香港の街に初めて立つ、主人公の彩美。彼女が行く観光スポットは、ビクトリアピークとスターフェリーくらい。あとは、街中にあるジューススタンドで搾りたて生果汁を飲んで、雲呑麺を食べて、片言の広東語を覚えて。それだけなのに、どこからか力が湧いてくる。読んでいると、自分も香港をふらふらと歩いているような気になってきます。

 初めての香港。母親や、祖父母、学校という日常から抜け出せたとき、初めて周りの風景が色を持っていく。自分が知りたいこと、聞きたいこと、伝えたいことが見えてくる。忙しい香港の街は、親切に先回りして行き先を教えてくれたりはしない。自分のことは自分で。なにもない個人が、裸一貫で自分を形作っていく場所。
 主人公が少しずつ変わっていったように、読み終わったらちょっと元気が出てきたような気分になります。

 読み終わってから眠りについたせいか、この夜は香港でコンサートに行っている夢を見ました。なんだか無性に楽しい夢で、目が覚めてからもいい気分がしばらく続いたけれど、これも「元気の渦」のおかげ?
ラベル:読書
posted by あんく at 13:54| Comment(0) | TrackBack(1) | 著者別 あ〜か | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月12日

『弥勒の月』

弥勒の月
弥勒の月
posted with amazlet on 07.07.12
あさの あつこ
光文社 (2006/02/22)
売り上げランキング: 28705


 この著者に時代小説作品があるということを初めて知ったのが、つい最近。興味をそそられて早速、図書館で借りてみたところ、これがとてつもなく面白い!

 切れ者すぎるせいか、捕り方にやる気や情熱がないように見える同心の信次郎。信次郎の父である先代から手札を受けている、岡っ引きの伊佐治。
 ある日、妻に身投げされた小間物問屋の主である遠野屋の清之介から、事件の真相を探ってほしいと頼まれる。妻が身投げする理由がまったく見あたらないという清之介。ありきたりな事件の裏にあるものはなにか。
 果たして、信次郎と伊佐治はことの真実を突き止められるのか。

 同心の信次郎の飄々とした切れ者ぶりと、なにごとにもそつのない清之介。腹に一物も二物もありそうな二人の掛け合いが絶妙で、うまい漫才でも見ているよう。それを、横で肝を冷やしたり、頭に血を上らせたりしながら、見守る伊佐治の温かい目線でときに和んだり。

 後半で、その軽妙さとはうらはらに、思っていた以上に重い真実が明らかになっていくものの、辛い気持ちよりも先を読みたいという気持ちがまさって、どんどん読み進んでいきました。
 最後も、めでたし、めでたしとは決して言えませんが、それでも信次郎や伊佐治の働きが、なにかしらを変えることができたんじゃないかと思えるものでした。
 闇を背負って生きることの重さや、簡単にやり直せないしがらみというものは、これほどまでにしんどいものなのか……それと同時に、一筋の光だけで人は生きてゆけることもあるのだと思わずにはいられません。

 これから信次郎がどんな同心になってゆくのか、変わっていく様にしろ、変わらずにいる姿にしろ、その後を見てみたくなりました。

 ネットで他の方の感想を拾い読みしてみましたが、意外にも賛否両論という感じでした。個人的には衝撃的と言っていいほどの面白さだったので、大絶賛の嵐かと思っていたのですが……。
 やはり、時代小説というのは、どことなくとっつきにくさがあるんでしょうかね?
ラベル:読書
posted by あんく at 21:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 著者別 あ〜か | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年07月05日

映画『ジョゼと虎と魚たち』

ジョゼと虎と魚たち(通常版)

『ジョゼと虎と魚たち』2003年・日本
 監督:犬童一心
 出演:妻夫木聡、池脇千鶴、上野樹里、新屋英子


 長らく見たいなと思っていた作品が、期待していたとおりにいいものだったときの気分は心地いいものです。
 強烈な存在感を見せるジョゼとおばあ。ひょんなことから、彼女たちと知り合った恒夫との関係が淡々と、ときにおかしく描かれます。

 “こわれもん(壊れ物)”と言われながら、猫が見たい、花が見たい、だから散歩に行かなければならないと言うジョゼ。見たいもの、知りたいもの、ほしいもの、そして今いる場所がどこなのかがちゃんと分かっている彼女が、とても眩しく見えてきます。
 息をつめるように生きていたジョゼが、少しずつ水面に浮かび上がるように元気になっていく姿が、眩しい。特にラスト、彼女の姿は勇ましくて、力強くて、泣けてきました

 本編の余韻にひたりながら、そのまま一気に楽しんだのがコメンタリー。犬童監督と、主演の二人が撮影中の裏話や、その場面について感想を言い合ったり、ちょっと見るつもりが気づいたらエンドロールまで見直してました。
 犬童監督がしみじみ「いい顔だねぇ」とか、「この場面がいいんだよね」と映画愛を炸裂させている横で、役のときよりずっとほんわかして愛らしい語り口の池脇千鶴さん、そして優等生っぽいイメージだったけれど、素は意外に普通の若者だった妻夫木さん。
 こっちも必見(必聴?)。
ラベル:映画
posted by あんく at 22:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月30日

6月の本読み

オンライン書店ビーケーワン:眠れぬ真珠 オンライン書店ビーケーワン:安徳天皇漂海記 オンライン書店ビーケーワン:誤読日記 オンライン書店ビーケーワン:愛すべき娘たち オンライン書店ビーケーワン:イニシエーション・ラブ オンライン書店ビーケーワン:空を飛ぶ恋 オンライン書店ビーケーワン:ベジタブルハイツ物語 オンライン書店ビーケーワン:モンゴルのおすそわけ オンライン書店ビーケーワン:蒲公英草紙 オンライン書店ビーケーワン:読者は踊る

『眠れぬ真珠』大人の恋愛。決して難解でも、エキセントリックでもなく、年齢の差があっても覗き見的ないやらしさもなく、楽しんで読める。男性作家の手による作品ということを、読んでいると忘れてしまう。
『安徳天皇漂海記』歴史に詳しい人にとっては、壮大でロマンあふれる面白いお話なんだろうことは分かるだけに、自分の歴史音痴がつくづく恨めしい。

『誤読日記』ありとあらゆる出版物を俎上に乗せながら、どれもしっかり語られていることに、ただひたすら驚く。
『愛すべき娘たち』BLではなく、女性を描いても、よしながふみは読ませるなぁと分かって、妙に嬉しくなった。

『イニシエーション・ラブ』表紙に「ミスエテリー・リーグ」とあるのに、読んでも、読んでも謎めいたところが出てこず、じりじり。最後の最後で、あっというどんでん返し…なんだろうけど、待ちくたびれて衝撃的な驚きとはいかず。86〜87年が舞台なので、テレホンカードなんかも出てきたのが、非常に懐かしかったです。
『空を飛ぶ恋』ケータイが登場する、短いお話。5分くらいずつ読んでいくのに、ちょうどいい長さ。

『ベジタブルハイツ物語』楽しく読みました。アパートの部屋に、アボカドとか、にんじんとか野菜の名前がついているのが、楽しかったです。以上!
『そろそろ旅へ モンゴルのおすそわけ』岸本葉子=旅もの、というイメージがあったけれど、癌を患われてから旅行は控えられていたというくだりでは、少なからずショックを受けました。それでも、軽快な語り口は健在で、一安心。写真も満載で、旅心が刺激されることうけあい。

『蒲公英草紙』目に見えぬものと、その世界に出会うお話に、現実と空想の間を浮遊するような感覚を呼び起こされたような気分。ただ、最後がどうにもしっくりこない。
『読者は踊る』ときどき、その辛口さ加減に食傷気味になるけれど、それでもやめられない。不思議です。

オンライン書店ビーケーワン:獣の奏者 1 オンライン書店ビーケーワン:獣の奏者 2

『獣の奏者(上・下)』
 “闘蛇”という動物が登場するファンタジー世界。読み始めると、一気にその世界が目の前に浮かんで、架空の動物たちや、それらが住まう洞窟、そこにいたる山道までが、現にそこに存在しているような気すらして、あっという間にお話の中に引き込まれていきます。

 エリンという主人公の少女。彼女の母は異民族でありながら、闘蛇という国にとって貴重な生き物の獣医師の職についていた。幼いころから、生き物にふれるのが当たり前の中で育った少女が、辛い母との別れを体験し、新しい道を歩いてゆく過程を描く物語。

 ファンタジーでありながら、少女も周りの人々も特別な能力を備えているのではなく、己の道に向かって突き進んでいくことで、可能性を大きく開かせてゆくその過程は、知りたい、分かりたい、理解したいという思いが、なにかを成し遂げてゆくことの喜びを思い出させてくれます。そういえば、子どものころには、読めない文字が分かるようになったり、テレビの言葉の意味が分かったり、そんなことが楽しかったような気がします。
 少女エリンが、ただひたすらに道をきわめようとする姿は、眩しくもあり、感動的でもあり。

 大人には、かつての感動を呼び起こすきっかけになるでしょうし、子どもたちが読めば、将来や、自分の可能性といったことに思いを馳せることができるかもしれません。
 でも、けっしてお説教くさいところはないので、物語世界にどっぷり浸って、思い切り楽しんでほしいお話です。
posted by あんく at 22:28| Comment(0) | TrackBack(0) | ○月の本読み | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月23日

映画『キサラギ』

『キサラギ』2007年・日本
 監督:佐藤祐市
 出演:小栗旬、ユースケ・サンタマリア、
    小出恵介、塚地武雄、香川照之


 冬のある日、人気のないビルの屋上に姿を見せた5人。ファンサイトの掲示板で知り合った彼らは、自殺した清純派アイドル、如月ミキの一周忌をともに過ごすために集まった。
 和気あいあいと思い出を語り合おうと始まった会は、果たしてどうなるのか。
 5人の濃い面々がくりひろげる、密室劇。

 いわゆる、密室ミステリーの類なのでしょうが、謎解きとしては決して巧い出来ではありません。もし、純然たるミステリーとしてこれを小説なりで読んだら、肩すかしをくったように思うかもしれません。
 でも、だからこそ観客が少し考えると次の一手の答えが分かるようにできている。次はこうくるぞ、くるぞ、と思っているところに、ズバッと直球ストライクが投げ込まれるような心地よさ。やっぱりこうきたか!とにんまりすると、さらに次の仕掛けが。劇中の会話や、言葉、小道具にちゃんとヒントが仕込まれていることに気づくと、次はこれかな、あれかなとどんどん楽しさが加速していきます。
 超人的な能力をもった名探偵が、一気に謎解きをしてくれる気持ちよさとはまた別の、ちょっとした爽快感です。

 そして、この集まりの結末を見届けた後、爽快感とはまた別のふっとした和らいだ余韻が漂います。
 時間が流れることも、なにかとかかわることも、偶然ではなくすべて必然なのかもしれない。

 ちょっとまた元気にやってみようか…そう、思いたくなる一本です。


 密室劇で、謎解き。お話を追いながら『12人の優しい日本人』がたびたび思い浮かびました。脚本は映画化を見こして舞台用に書かれたものだった、という説明が公式サイトにあって、なんだか納得。


posted by あんく at 22:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月11日

『物は言いよう』

物は言いよう
物は言いよう
posted with 簡単リンクくん at 2007. 6.11
斎藤 美奈子著
平凡社 (2004.11)
通常2-3日以内に発送します。


 FC(フェミ・コード)なる、その言動がセクハラや性差別にならないかどうかの基準を用いながら、政治家や著名人の発言、失言、迷言などなどをえぐる一冊。

 そこまで考えなくても……、と思うところがないわけではないし、己の言動を振り返ってひやりとするところもあるけれど、読み終われば溜飲が下がります。「よくぞここまで言ってくれた!」感たっぷり。

 最後のほうにあるジェンダーフリーの考え方を、色鉛筆にたとえて説明する部分は、とくに秀逸。感激的ですらあります。
 とかく、「女のくせに」とか「男なら」なんて言いがちですが、性別に関係なく、いろんな性格の人がいて、考え方があって、当たり前と思えるようになるには、こうして自分の中にあるものを改めてじっくり見つめてみてはどうだと、語りかけられている、いや横っ面を張られたくらいの衝撃は感じられます。

 しかし、著者の語り口があまりにも快活、爽快なので、すっかり自分も分かったような気分になって、そこで思考が止まってしまうような気も。いろいろな意味で、危険な一冊かもしれません。

 そういえば以前、結婚した友だちが「なんで、夫のことを“主人”なんて呼ばなくちゃいけないの?私は家来じゃないのよ」と鼻息を荒くしていたのを聞いて、そうか、そういうふうに考える人もいるんだと思ったことを思い出しました。
 それ以来、“ご主人”という言葉を使うたびに違和感を覚えつつも、他の人の“夫”をうまく言い表せることばが見つからず、いまだ使い続けています。本書では“ご夫君”と言い換えてはとありますが、さすがにこれは耳慣れないしな……。

 この本が出てから数年たっていますが、未だに公人たる政治家の失言が繰り返されてますね。
 選挙で当選したあかつきには、ぜひこの本を当選祝いとして各政党なり、衆議院、参議院各議会なりで、最低限のマナー本として配布してくれないものでしょうか。それでも理解が難しい方には、ぜひとも、よしながふみの『大奥』をセットにして、もしも性別が逆転したらをもう少しリアルに感じ取っていただけるよう配慮してはどうでしょう?
posted by あんく at 21:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 著者別 さ〜た | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月06日

『十面埋伏』

十面埋伏 上
十面埋伏 上
posted with 簡単リンクくん at 2007. 6. 6
張 平著 / 荒岡 啓子訳
新風舎 (2005.11)
通常2-3日以内に発送します。
 
十面埋伏 下
十面埋伏 下
posted with 簡単リンクくん at 2007. 6. 6
張 平著 / 荒岡 啓子訳
新風舎 (2005.11)
通常2-3日以内に発送します。


 中国の地方にある刑務所。同房の受刑者に暴行をし重傷を負わせた王国炎を取り調べた捜査官・羅維民。王は興奮した口調で自分が過去の凶悪未解決事件に関係していたと言い始める。初めは半信半疑だった羅維民だが、次第にそれが事実であると確信してゆく。
 しかし、その受刑者はなぜか模範囚として異例の減刑まで受けている。なんの対策も講じられないことに不信感を抱いた羅維民は、かつて自分の同僚だった公安の警察官らに援助をもとめながら、真相に迫ってゆく。そして次第に、背景にある官僚や役人たちの汚職が明らかになり、羅維民たちの前に立ちはだかってゆく……。

 上下巻で800ページにも届きそうな長編。しかも、中身は中国の刑務所とそこに絡む汚職。ノンフィクションといっても通用しそうな骨太のテーマ、しかも苦手な翻訳物だけに書店で初めて見たときには「縁のない分野だな」と横目で見ただけでした。
 しかし、食わず嫌いはいけません。とっつき悪さは初めの数ページを読んだら、とっとと消え去ります。導入部分から、最後まで息つかせぬ展開の連続。果たしてどんなふうに結着がつくのか、どこにおさまるのか、読み始めたら止まらなくなりました。

 ニュースでもたびたび取り上げられる、中国の汚職問題。政財界に深く根をはる深刻な問題。さらには、急速な経済発展による富裕層と農村の広がる経済格差。果たして、羅維民たちはこの泥沼のような現実から抜け出せることができるのかと、読んでいるこちら側が気を揉む始末。絶望感すら覚えたのも、一度や二度ではありません。
 それでも、組織の中で知略をめぐらせ、厚い泥に足をとられながら進もうとする人々を、物語は丹念に描いてゆきます。

 悪いことも、いいことも、どちらにしても徹底的にやり尽くす。さらにそこに両方をあわせもつ灰色の人々をも内包して、すべてが歴然と、当たり前の顔をして共存しあう。みなが、ぶつかり合うことをいとわない、熱烈で、激しいものにあふれた、読み応え十分の作品でした。
 お互いを励ましながら、目的に向かってつきすすむ、真の公僕たちの活躍が胸に迫ってきます。

 タイトルの「十面埋伏」とは、周囲に隙なく伏兵が潜んでいることだそうです。
posted by あんく at 23:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 著者別 さ〜た | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。