2008年03月01日

2月の本読み(08年)

ウエザ・リポート ダイアルAを回せ (KAWADE MYSTERY)横浜開港絵巻 赤い崖の女借金取りの王子殿様の通信簿夜半の綺羅星 (小学館文庫 あ 5-2)武士道シックスティーン

『ウエザ・リポート』 宇江佐真理
 時代小説家だけに、作品から著者の日常を思い浮かべることがなかっただけに、新鮮な気持ちで読める。きっぱり、さっぱりした語り口が小気味よく、楽しい。夢中になって読んできた作品ができた背景をのぞいたようで、嬉しいような、申し訳ないような気分だけれど、作家さんのエッセイはやっぱりやめられない。

『ダイアルAを回せ』 ジャック・リッチー 駒月雅子他(訳)
 ジャック・リッチーの短編3作目。2作目はちょっと退屈したけれど、今回は楽しかった。さらっと楽しむに最適。

『横浜開港絵巻 赤い崖の女』 山崎洋子
 江戸末期から明治にかけての時代の流れと、小さな漁村に生まれた女性が、出自や身分にかかわらず自らの手で生きる糧を見つけ変わってゆくさまが重なる。10年ぶりくらいの、著者の作品を読んだら、むしょうに『花園の迷宮』が読みたくなってきた。

『借金取りの王子』 垣根涼介
 今の世相が不景気一色ではないせいか、一作目に比べて悲壮感やせっぱ詰まった感がゆるんで、明るい雰囲気。人員削減請負会社に勤める男性が主人公というのもおもしろいし、リストラ候補の面々の掘り下げ方も丁寧で、でてくる仕事の内情がかいま見える。
 一番おもしろかった表題作。極限を超えて、身をすり減らしてもなお働きたいと思わせるものはなになのか?それが分かったとき、働くということに潜む可能性に感動した。
 垣根涼介は、憎めないワルさと、脳天気な明るさを混ぜ合わせた、ワル明るさとでもいうようなものが持ち味だと思うけれど、それが絶妙な一冊。もう一回読みたい!

『丹生都比売』 梨木香歩
 身に巣くう人外と交わる力。人と外界をつなぐ者。そういったものが生きていた時代の、おとぎ話。

『殿様の通信簿』 磯田道史
 江戸時代、殿様の通信簿とでもいうような書き物があったというのも驚くが、それを地道に探ったというのもすごい。女好きだとか、政治手腕だとか、藩の経済状態だとか。歴史に疎くとも、しっかり楽しめた。

『夜半の綺羅星』 安住洋子
 目明かしの下っ引きの達造を主人公に、回想でつづられるお話は、どんどん先が気になるほど引き込まれる。後ろ暗い過去を持つものばかりが集まっているのに、お話が進んでその芯にあるものにふれると、また違うものに見えてくる不思議さ。お気に入りの時代小説家に追加。

『武士道シックスティーン』 誉田哲也
 剣道に打ち込む磯山香織。宮本武蔵に傾倒し、勝つためのストイックな剣道人生を送る少女。腕ならしに出場した市民大会で、無名の選手に負けてしまった。相手は、中学から剣道を始めたという、平凡でどこにでもいそうな少女。勝ち負けではない剣道をしたいという彼女と、勝負にこだわる香織の高校生活が瑞々しい。
 剣道という、精神性や礼儀を重んじる競技と、青春ってこんなにもぴったり合うんだと驚き。
 個人的には、男子剣道部部室を「置いたものが全部チーズになる」という表現が好き。剣道って、ほんとうに臭いなしには語れないものなぁ。

 今月は、ドラマ見たり、DVD見たりにかまけてしまって、読書量が著しく低下。時間がもっと欲しい。

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2008年02月07日

『無双十文字槍 鬼坊主末法帖』

無双十文字槍―鬼坊主末法帖
犬飼 六岐
徳間書店 (2007/08)
売り上げランキング: 202599

 いや、もう文句なしにおもしろいです!!

 背丈は六尺を越える大男。両脇に一人ずつ、計二人の大人を抱えて山道を駆け続けるほどの剛力の持ち主で、宝蔵院流十文字槍の使い手。俗なことも大好きだが、権力に媚びることもなく、己の道をつきすすむ、不覚という僧侶が主人公です。
 これ以上ないほどの破れ寺に住みついた僧侶の不覚は、特定の檀家を持たず、寺に出入りする瓦版売りの佐七が持ち込んでくる頼まれごとを引き受けたり、事情のある亡骸を弔ったりしながら暮らしています。
 この破天荒な僧侶・不覚がまず魅力的。
 ものすごーく大きな鼻○そ(←別にいいけれど、文字にするのがためらわれたので、伏せ字です…)が取れて、それをどうしようか真剣に悩んだかと思うと、損を承知で筋を通したり。読めば読むだけ、不覚のおもしろさに取り込まれてゆきます。

 10の短編からなる連作集ですが、十人十色ならぬ、十話十色とでもいいたくなるほど多彩で、どれもこれもがおもしろい。物語の起こりも、展開のしかたも、出てくる人たちも、どれ一つとして既視感を感じさせないつくりは、お見事の一言。
 時代小説にも、まだまだ新しいものがでてくる余地があると思うと、わくわくしてきます。

 ペンネームの由来についてふれたインタビュー記事を、ネットで見ました。ロッキーという名前の犬を飼っているので、「犬飼六岐(いぬかいろっき)」だとか……まさか、こういう意味とは思ってもみませんでした。さすが、破天荒で一筋縄ではいかない人物を、こんなに活き活きと描く作家さんだけあります。

posted by あんく at 23:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 著者別 あ〜か | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月02日

1月の本読み(08年)

トーキョー・プリズン 筋違い半介 千年の祈り (Shinchosha CREST BOOKS) 漢方小説 (集英社文庫 な 45-1) (集英社文庫 な 45-1)シー・ラブズ・ユー―東京バンドワゴン にっぽん虫の眼紀行―中国人青年が見た「日本の心」 (文春文庫) シャッター切ってアジアを食す 吉岡清三郎貸腕帳 少女七竈と七人の可愛そうな大人 終わらぬ「民族浄化」セルビア・モンテネグロ (集英社新書)天平冥所図会

『トーキョー・プリズン』 柳広司
 戦時における罪や、人間というものが容易に残酷になれること、そして過ぎ去ったことに目を向けずに生きてゆけるものであるという不条理が、柳広司らしいそこはかとないユーモアで描かれる。ふと、自分はどうだろうと考えてしまう。

『筋違い半介』 犬飼六岐
 とにかく、出てくる人が多彩で、個性的でおもしろい!そのちょっと風変わりな人々が、物語の中でさらに思わぬ動きをしてくれる。いったい、どこでこんな人物造形を思いつくのだろう?おもしろい時代小説作家さんは、まだまだいるんだと思うと幸せな気分になる。

『千年の祈り』 シーユン・リー 篠森ゆりこ(訳)
 翻訳のよさもあるのだろうが、シンプルな文章は、言葉そのものの美しさを思い出させてくれる。日本語で読んでいながらも、中国の日常風景がキャンドルを灯すようにじんわりと浮かび上がってくる。ありきたりでないのに、普遍的な不思議な短篇集。

『漢方小説』 中島たい子
 体調を崩した主人公が、東洋医学に出会って少しずつ回復してゆくのを見ていると、漢方薬や中医に興味がわいてくる。なにか、飲み始めようかと真剣に考えてしまう。

『シー・ラブズ・ユー』 小路幸也
 『東京バンドワゴン』の続編。新しい人物も登場して、まだまだ続きそうな感じ。

『にっぽん虫の眼紀行』 毛丹青
 中国人でありながら、著者の書く日本語はそれをまったく感じさせないほどに流麗で美しいのに驚く。特に、自然風景の描写は読んでいてため息が出るほど。

『シャッターを切ってアジアを食す』 三留理男
 アジアの食は、多種多彩で、写真になるとほんとうに絵になる。市場に積み上げられた魚や野菜や果物の独特の色合いは、においたちそうなほど存在感あり。タイ料理がむしょうに食べたくなる。

『吉岡清三郎貸腕帳』 犬飼六岐
 またしても設定でぐいと引き込まれた。“貸し腕屋”という聞き慣れない商売を生業とするのは吉岡清三郎という、もとは商家出の男。悪人面で、容赦なし。冴えわたる腕でいともあっさり相手を斃すかと思えば、貸し腕代の利息を几帳面に帳簿付けしたりして、どことなく愛嬌がある。そして、借金のかたに下女として迎えた、おさえという女。あくまでも清三郎の目を通しての印象だけがつづられているのだが、その評価たるや、もう笑ってしまうほど。「冷気を感じさせるほど暗い」とか言って、その姿を見ては、どんよりしている清三郎の姿がおかしくて、おかしくて。陰気な様子をかいて、こんなにおかしいなんて、それこそおかしい。
 江戸情緒や、市井の人々の人情や、剣戟の痛快さのどれとも違う、一風変わったおもしろみが癖になりそう!最近の、いちばんのお気に入り!!

『少女七竈と七人の可愛そうな大人』 桜庭一樹
 古風な言い回しや、会話が小さい北の町の閉塞感によく合っている。何度も出てくる“かんばせ”という言葉がなぜか印象的。

『終わらぬ「民族浄化」 セルビア・モンテネグロ』 木村元彦
 ボスニア紛争では、ボスニア対セルビアという対立が主で分かりやすかったけれど、旧ユーゴ全体となると、どの地域でなにとなにが争っているのか、どちらが攻勢なのか、孤立しているのか、あまりに入り乱れて混乱しきり。これほどまでに、民族が分離し、衝突を繰り返してきたのだと思うと、やりきれない思いに押しつぶされそうな気がした。

『天平冥所図会』 山之口洋
 平安時代が舞台で、成仏できない幽霊や、地元の神様なども登場するファンタジー。かつて、人と霊や神の境目が今よりずっとゆるやかだった時代への、憧れのようなものがかいま見える。実在の人物たちのとらえ方も、おもしろくて、歴史に疎い私でも楽しめた。
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2008年01月28日

2007年の小説以外

三四郎はそれから門を出た 翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだったいつも旅のなか 打ちのめされるようなすごい本 大仏破壊―ビンラディン、9・11へのプレリュード (文春文庫 た 63-1) ドキュメント 戦争広告代理店 (講談社文庫) サラーム・パックス―バグダッドからの日記 とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起



2007年の小説以外

 今さら2007年の本読みでもないのですが、小説以外で強く印象に残ったのものを8冊ほど選んでみました。というより、読んだもののほとんどが小説だったので、自然こんなことに。

『三四郎はそれから門を出た』 三浦しをん
 一度、図書館で借りて読んで、またよみたくなって単行本を購入して再読。本に対する熱い思いを感じながら、紹介されたものを一冊ずつ読んでゆく楽しみも味わえて、二度おいしい。

『翻訳家じゃなくカレー屋になるはずだった』
 
金原瑞人
 こんなエッセイを書く人が訳した作品なら読んでみたい!カレー屋じゃなく、翻訳家になってくれてありがとうと言いたいような気分。

『いつも旅のなか』 角田光代
 ほんわりとした風貌からは想像もつかない旅のしかたに、いつもながら驚かされます。そして、そんな旅をしている作者をうらやましく思い、旅の風景を瑞々しく文字にできることに憧れ……。旅本の角田光代は、やっぱりいい!

『打ちのめされるようなすごい本』 米原万里
 ずっと記憶に残りそうな、まさに打ちのめされたすごい本。ふだんは読まないような分野の本が、こんなにも魅力的に感じられるのは、おそらく筆者の語り口によるところが大きい。

『大仏破壊』 高木徹
 アフガニスタンのタリバン政権が、アルカイダとどうかかわり、ついにバーミヤンの大仏遺跡を破壊するまでに至ったのかが、周辺の人々への取材で明らかになってゆくさまがビリビリと伝わってくる。ニュースだけでは見えてこないイスラームの一面が見える。これで、アフガニスタンだけでなく、イスラームに関係したいろいろな本に興味が持てるようになった。

『ドキュメント戦争広告代理店』 高木徹
 『大仏破壊』の高木徹によるもう一つの本。こちらもかなり有名な一冊だけに、読み応え十分。多くの人が命を落とし、隣人同士が争い、民族によって国家が分断された一大事が、対岸の大国による広告戦略の一環で操られていくことが、とてつもなく恐ろしく、文字通り衝撃的だった。国一つが存在することを、考えずにはいられない。

『バグダッドからの日記』 サラーム・パックス 谷崎ケイ(訳)
 バグダッド在住のイラク人青年による、アメリカのイラク攻撃直前から、空爆が始まっていく日々の記録。自分と同じようにネットを見ている人のすぐそばに、爆弾が落とされ、町が燃えているという現実。この差はいったいなんなんだろう?そう思わずにはいられませんでした。

『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』 伊藤比呂美
 伊藤比呂美の文章は、とにかく中毒になる。読めば読むほど気持ちよくなって、止まらなくなってしまう。とにかく、読んで、読んで、読んで、読んで、そして焦り、また読み、浸る。そんな気分?

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2008年01月16日

2007年の本読み

クラブ・ポワブリエール  ウルティマ、ぼくに大地の教えを 弥勒の月 (文芸) 十面埋伏〈上〉 十面埋伏〈下〉 獣の奏者 II 王獣編 獣の奏者 I 闘蛇編 香港の甘い豆腐 花宵道中 家守綺譚 (新潮文庫) 凸凹デイズ はじまりの島 (創元推理文庫) 鹿男あをによし


2007年の10冊+αです。

『クラブ・ポワブリエール』 森福都
 中国時代物だけではなく、現代ものもおもしろい!連作集ならではの面白さにあふれていて、読んでゆくごとにそれぞれの繋がりを見つけては楽しんだ一冊です。


『ウルティマ、ぼくに大地の教えを』 ルドルフォ・アナヤ 金原瑞人(訳)
 翻訳家、金原瑞人のエッセイで紹介されていた作品。少年が少年でいられる最後の時間の清らかさと、属したことのない南米の世界観がまざりあって、不思議な浮遊感に包まれました。

『弥勒の月』 あさのあつこ
 あさのあつこの時代小説。読ませる話はこびもさることながら、主となる人物たちが魅力的。昨年末に続編となる作品が出たらしいので、そちらも楽しみ。

『十面埋伏(上・下)』 張平 荒岡啓子(訳)
 中国の刑務所を舞台にした、手に汗握る熱い男たちのドラマ。上下2巻からなる、分厚い作品にもかかわらず、あまりの面白さに一気に読んでしまう。中国らしい舞台設定が生きた、一級娯楽作品にどっぷり浸りました。

『獣の奏者(上・下)』 上橋菜穂子
 子どものころに読んでみたかったとも、今の年になったからこそ楽しめたとも思える、幅広い年齢層に応えられるであろう世界観が印象深い。ページを進めるたびに、見たことのない世界が広がってゆきます。


『香港の甘い豆腐』 大島真寿美
 大島真寿美という作家さんの、ゆるゆるとした空気感にはまりました。お話の中をただよって出てきたら、ちょっと足を踏み出せている、ぼんやり分かってきた、そういうほんの少しの実感が、癖になります。一気に作家読みするより、時間をかけて一冊ずつ読んでいきたくなる作家さんです。

『花宵道中』 宮木あや子
 身を売る女性の世界につきまとう受け身の悲壮感よりも、どこにあっても持っているであろう芯の強さで描かれた女性たちの話に、どこかほっとさせられます。女性ならでは…なんていう形容詞はあまり好きではないけれど、女性だから描ける物語かもしれません。女による女のためのR-18文学賞で大賞&読者賞に選ばれたことに納得。

『家守綺譚』 梨木香歩
 現とそうでないものが曖昧に入り混じった空間が、なんとも心地いい。読んでからずいぶんたつのに、ふっとしたときにそのときの不思議な高揚感が思い出される、あとをひく一冊。

『凸凹デイズ』 山本幸久
 小さなデザイン事務所が舞台となった、山本幸久らしい作品。瀬尾まいこ、大島真寿美と並び、個人的な“三大ふんわり系”と称することにしました。お話そのものは、かなりせっぱつまっていたり、シビアな現実に直面していたりするのに、語り口はあくまでもふんわり、やわらか。三者三様のふんわり具合があって、疲れたときでも、元気なときでも読みたくなります。

『慶応わっふる日記』 村田喜代子
 あえて、10冊の中に入れたものの、具体的にどこがどう好きとうまく表現できない一冊でもあります。30代くらいの作家さんの作品を読む機会が多くなってきていますが、それらとは違うなにか。少ない語り口で、大きなものを見せてもらえる安心感なのかもしれません。


10冊に入れたかったもの
『田辺聖子珠玉短篇集1』 田辺聖子
  文章に年齢というものがあるとしたら、田辺聖子のそれは永遠の20代なのかもしれないと思うほど、瑞々しさがあふれているのに、ただただ圧倒されました。
『はじまりの島』他 柳広司
 一冊を選ぶというよりも、気になる作家さんという意味での柳広司。思わず作家読みしてしまった中でも、ダーウィンが進化論を唱えるきっかけとなったできごとを描いたこれがおもしろかったです。
『鹿男あをによし』 万城目学
 読んでから、ドラマ化されると聞いてまさにタイムリーだったなと。ずっと読みたかった作家さん。奇想天外というのでしょうか、それなのになんの変哲もないふうに淡々としたところもあるのが、おもしろかったです。マイ鹿とか、鹿せんべいとか、鹿とか、鹿とか、鹿とか(以下略)。ポッキーと鹿せんべいが食べたくなりました。
 

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2008年01月03日

『風が強く吹いている』

風が強く吹いている
風が強く吹いている
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三浦 しをん
新潮社 (2006/09/21)
売り上げランキング: 398
 元旦は、実業団駅伝を、2日と3日は箱根駅伝を見て過ごすというのが、ここ何年もの年始の定番です。暦の具合で、まとまった休みがとれそうなときには旅行にでも…と思うものの、駅伝なしのお正月はどうにも耐えられそうにないので、けっきょくこたつで駅伝三昧に落ち着きます。

 そして今年こそは、この作品を読みながら駅伝を楽しむぞと決めていました。早く読み始めたいという思いをぐっと押さえ込んでいただけに、おもしろいこと、おもしろいこと。

 床の抜けそうなボロアパート竹青荘の住人たちが、ほとんどなりゆきで箱根駅伝に挑む物語。陸上経験がないものがほとんど、しかもエントリーぎりぎりの10人だけの部員。果たして、清瀬灰二率いる寛政大学陸上部員たちは、箱根駅伝に出場できるのか……。

 駅伝をなぜこんなに必死に見入ってしまうのか、毎年テレビの中を駆ける学生たちの姿を見ながら浮かんでくる思いです。しんどい思いをして、なんで20キロ以上の道を走るんだろう?そして、それを何時間も見続ける自分も、つくづく酔狂だなと。それでも、見ずにはおれないし、目が離せなくなる。
 そのわけを、ほんの少し分かったような気分になれるのです。
 自分では決してのぞくことのできない、速く走ることで得られる世界が、文字となってこちら側に迫ってくる。あたかも自分が、大地を蹴って走っているかのような恍惚とした気分が味わえます。

 走ることに、一度も楽しみを感じたことなどないのに、明日から走ってみようか…読み終わると、そんなことを考えていることに気づきます。

 文字を追いながら、画面の中には現実の箱根駅伝。彼らの姿があるからこそ、この作品の人物たちがいきいきと躍動してくれたような気がします。物語に負けず劣らず、風を受けて走った2008年の箱根駅伝ランナーとそれを支えた人たちに、感謝します。
 来年も、この一冊を読みながら、箱根駅伝を見るかもしれません。

posted by あんく at 20:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 著者別 ま〜わ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年09月03日

8月の本読み

それを言ったらおしまいよツ、イ、ラ、ク政治的に正しいおとぎ話葉桜の季節に君を想うということ銃とチョコレート (ミステリーランド)
宙(ソラ)の家 (角川文庫)空中ブランコ村田エフェンディ滞土録桃―もうひとつのツ、イ、ラ、ク (角川文庫 ひ 8-14)ほぼ日ブックス#006 石川くん (ほぼ日ブックス)
ザビエルの首 (講談社ノベルス)めぐる季節の話 (安房直子コレクション)エロマンガ島の三人 長嶋有異色作品集東京DOLL (講談社文庫)家守綺譚
シャドウ町長選挙ドキュメント 戦争広告代理店 (講談社文庫)

 うぅ、amazonの画像は大きさがばらばらで、並べてみてもどうにも気持ちわるいですが……。

『それを言ったらおしまいよ』 短い作品の中にも、独特の世界が広がって、何度も読み返してしまいます。新作が待ち遠しい〜〜。
『ツ、イ、ラ、ク』 前半、小学生時代の描写が秀逸。なんというか、読んでいるだけで妙に恥ずかしい気分になってしまうくらいドキドキする。

『政治的に正しいおとぎ話』 英語の原本を読めれば、数十倍は楽しめるんだろうな。日本語で読んでみると、どうも間が抜けたような脱力感が。
『葉桜の季節に君を想うということ』 なるほど、そうきたか!思い返せば、途中ところどころ、ひっかかるところがあったけれど、すっかり騙されました。小説だからできる仕掛けがお見事。

『銃とチョコレート』 少年の一大冒険譚。それでいて、出てくる人たちが、けっこうひねくれていて、ブラックなのが魅力的。少年も、お父さんも、お母さんも、いじめっ子も、探偵もみんないい!
『宙(ソラ)の家』 作者のデビュー作だそうです。ゆるゆるとした空気に、「だめでも、潜ってても、年とっててもいいんだよ」と励まされたような気分になる。パワー全開、元気もりもりじゃなく、ほんのちょびっとだけ前向きになったような気がするところがたまらなく好きです。

『空中ブランコ』 相変わらず、伊良部先生大暴走。ちょっと診察してほしい気分になる……。
『村田エフェンディ滞土録』 途中までは、村田氏のトルコ滞在記とでもいうような形。それが、次第に物語の奥底にもぐりこんでいくような、しっとりとした感覚に包まれます。

『桃−もうひとつのツ、イ、ラ、ク』 『ツ、イ、ラ、ク』の姉妹編ともいえる短篇集。
『ほぼ日ブックス#006 石川くん』 石川啄木、けっこう好きなのですが、こうしてみるとものすごいだめだめくんですね。

『聖フランシスコ・ザビエルの首』 日本にキリスト教を伝えた人、という程度しか思い浮かばないザビエル。なぞ解きも楽しみつつ、フランシスコ・ザビエルという人の来し方を追体験するような気分になれます。柳広司という作家さん、読みやすくて、おもしろくて、どんどん読みたくなりました。
『めぐる季節の話(安房直子コレクション)』 移りかわる季節とともに、物語が広がっていくようで、読むごとにため息が。

『エロマンガ島の三人』 楽しく読んだものの、正直よく分かりませんでした。
『東京DOLL』 石田衣良作品としては、物足りない気も。東京の土地勘や、実景が目に浮かべば、違う楽しみ方ができたかも。

『家守奇譚』 畳と縁側、床の間の掛け軸に、犬一匹。ときどきやってくる、不思議な客人たち。もしもかなうなら、この作品の主人公のような生活がしてみたいものです。
『シャドウ』 前回読んだ、同じ作者の作品が予想外の結末だったので、つい勘ぐりすぎて読んでしまいました。一気に読ませる力があって嫌いじゃないけれど、どうにも後にどんよりした澱のようなものが残るのが難点。

『町長選挙』 表題作がいちばん面白かった。田舎にありそうな、利権がらみ、しがらみだらけの選挙がおかしくも、もの悲しい。でも、それを嘲っているふうがないので、ほっとします。
『ドキュメント 戦争広告代理店』 戦争も、一国の行く末も、なんらかの意図が働けば、いともたやすく変わってしまうという現実にうちのめされます。果たして、自分が見ているものはどの一面なんだろうか?ネットやニュースで世界のことが手に取るように分かると思っていたことは、錯覚なのかもしれない、そんなことを考えさせられました。たまには、骨太な本もおもしろい。
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2007年08月22日

『あるきかたがただしくない』

あるきかたがただしくない
枡野 浩一
朝日新聞社 (2005/12)
売り上げランキング: 57730


 いつも楽しみに見ているblogで絶賛されていて、前から気になっていたので読んでみました。

 エッセイですが、ひたすらに「別れた妻が、子どもに1ヵ月に1度は会わせるという裁判での約束を守らず、行方をくらましてしまった。子どもに会わせてほしい」ということが、これでもか、これでもかと書かれています。
 なんといいますか、非常に執拗で、情けなくて、じめっとしていて、元気が奪われていくような気分になります。が、一冊とおして全部この調子だと、人というのは慣れるものなのですね。最後の方では、どこからこの話題につながっていくのか、ちょっと心待ちにしてすらいることに気づきます。

 これほどまでに、私的なメールや、日記などではなく、れっきとした大衆の目に触れる場で、これほどまでに赤裸々に「子どもに会いたい」と訴え続けられるこの思いの強さというか、まっすぐ具合。圧倒されます。

 こんなに強く思っているんだから、相手の方も子どもに会わせてあげればいいのにな、と思ったり。
 反対に、ここまで外堀を埋められても頑なに会わせない元妻のエネルギーもすごいなと、変に感心したり。
 しかし、善し悪しではなく、ここまで激しい二人の周りにいる人も大変だったでしょうね。どちらかに肩入れしていた人も、そうでない人もなんらかの形で巻き込まれてしまったことを思うと、離婚というのは一筋縄ではいかないものなんだなと、人ごとながら考えてしまいました。

 途中にある、元妻にあてた手紙。読んだときには気づきませんでしたが、以前読んだ『作家の手紙』にも収録されていたんですね。こうしてこの本を読み、もう一度読み返してみると、なんとも切ない。
 男女の間は、理屈ではどうにもならないけれど、親と子はそれとは違う意味で不思議な縁があるもののような気がします。
 いつか、この本なり、手紙を子どもさんたちが読んでくれる機会があることを願います。
posted by あんく at 21:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 著者別 ま〜わ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年08月10日

『魍魎の匣』キャスト

 京極夏彦原作の『魍魎の匣』が映画化されるそうで、公式サイトをのぞいみました。
 まだ製作発表しか見るところはないんですが、ここにある監督、原作者、出演者の並んだ写真にしばし目が釘付けになります。顔、というより頭蓋骨の大きさがこんなにも違うなんて、神秘的ですらあります。よくぞこの狭い日本に、こんなにも顔立ちや骨格の違う人たちが集まったものだと。

 ……と、そんなことよりも、前作とキャストが変わっているのですね。しかも、関口巽役が永瀬正敏さんから、椎名桔平さんに。前作で、永瀬さんがあんまりにも関口役にぴったりだっただけに、ちょっと驚きです。椎名桔平さんは、関口というよりも京極堂のほうにイメージが近いような気がするのですが。

 初めて京極堂シリーズを読んだとき、勝手にキャスティングしてみたことがあります。かれこれ10年くらい前のことなので、主要な人物しか覚えていないし、隔世の感がなきにしもあらずですが、我ながらなかなか気に入って、その後のシリーズを読むときは脳内変換していました。

 中禅寺秋彦(京極堂):思い浮かばず…
 榎木津礼二郎:阿部寛
 関口巽:堤真一
 木場修太郎:今井雅之

 10年くらい前は、堤真一さんというと舞台が中心で、テレビで見る役は、ちょっと暗い青年や、犯罪に走ってしまう小心な人が多かったので、関口役と思ったのですが、まさか京極堂とはねぇ……。
 シリーズの中では、いちばん好きな作品だけに、どんな映像になるんでしょう?

 公式サイトはこちら→→→■■■

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2007年08月02日

7月の本読み

ひとり暮し
 月に一冊は読みたくなる、赤川次郎。 
まよいこんだ異界の話
 子どものころに読んだ「ハンカチの上の花畑」。今読んでもどきどき、わくわく。いくつになっても、ここにあるような異界にふれるとなぜか、気持ちがざわめく。

幸福な食卓 (講談社文庫 (せ13-1))
 一見、のほほんとしているようで、それぞれが問題を抱えている家族。彼らがどこかに封をして見ないようにして調和をとっているところに、現れる他人の存在。その他人である主人公の同級生、兄の恋人のヨシコなどの描かれ方がとっても魅力的。毎日を過ごしていく中で失うものもあるけれど、だからこそ新しく出会えるものがあるんだと思えて元気が出ます。
ナラタージュ
 最後まで物語にのってゆけなかった。主人公の泉にもいらいらしたけれど、なによりも、高校演劇部の顧問だった葉山がだめでした。夜中に「心配だ」とかいって電話をするあたりに非常な嫌悪感を覚えて怒りながら読むことしきり。どうも、合わなかったようです。

たまには、時事ネタ
 共感する部分も多かったので、思いを代弁してもらえたようですっきり。ただこれは、著者の考えと違う部分が多いと、なかなかすんなり読めないような気も。
狐狸の恋 お鳥見女房
 矢島家は、まだまだ人が少なく淋しいけれど、登場人物たちの恋に動きが出てきて続きが楽しみ。

十日えびす 花嵐浮世困話
 実在のご近所トラブルを思わせるような人物が出てきてびっくり。家族が壊れて、また形を変えて絆ができて、生きていくことや、時間がたつことのもつ意味をしんみり味わえる。安心して読めるのが嬉しい連作集です。
ほどけるとける
 ゆるゆると続く文章に、初めは手応えのなさも感じたけれど、しばらくするとそれがもっと読みたいと思うほどの心地よさに変わっていく。

山桃寺まえみち
 小説というより、エッセイとして読むとしっくり。
漱石先生の事件簿 猫の巻 (ミステリーYA!)
 『吾輩は猫である』のエピソードを元にした、日常ミステリー。日常のちょっとした謎を解き明かしながら、日露戦争のあった時代が少し身近に思えてきます。しかし、漱石という人はあんなにも風変わりな人だったんでしょうか?おつにすました偉人よりは、親しみを感じました。

虚無への供物〈上〉 
虚無への供物〈下〉
 上巻を読んでいるときから、うすうす予感はしていたとおり、なんともいえない結末でした。殺人の動機と、それが分かったときの周囲の反応がいちばんの不思議。途中は、それなりに楽しめました。

見知らぬ町ふしぎな村 (安房直子コレクション)
 ちょっとずつ読んでいくのが楽しみになる。ほっとして、じんわりといい気分になります。
月魚
 二人の古書店主の男たちの関係が、もう少し艶めかしくなるのかと思いきや、意外にもどかしいまま。

ララピポ
 意味不明なタイトルの意味は、後半で明かされてすっきり、そして納得。
贋作『坊っちゃん』殺人事件
 吾輩は猫であるのみならず、坊ちゃんも全部読んでいないような気が……。でも、これを読むとちゃんとあらすじが分かるのでお得?

逆説探偵―13人の申し分なき重罪人
 重罪人とタイトルにあるものの、出てくる犯罪はさほど凶悪でも、鮮烈でもないので安心して読めます。が、解決パターンが途中までずっと同じなので、中盤で飽きてしまったのも事実。
花宵道中
 吉原を舞台にしながら、現代風味も加味された読み口は、時代小説に不慣れでもすぐになじめそう。そして、吉原で生きる女性たちの心の動きが切なく、愛おしい。また一人、次回作を絶対に読みたいと思える作家さんに出会いました。

趣味は読書。
 ベストセラーといっても、興味を持てるものばかりではないので、著者が変わりに読んで辛口に斬ってくれるという一石二鳥の本。そうか、そうだったんだ。
暗黒童話
 さわやかさと、残酷さがいりまじった不思議な世界。


 7月初めでbk1にリンクができなくなったので、今回からamazonに変更。ただ、画像を並べて貼るのがどうにもうまくいかず、今月はタイトルのみです。『漱石先生の事件簿』や『花宵道中』は表紙のデザインもきれいで、ぜひ画像つきで表示させたかったんですが、タグを変更したり、大きさを整えたり四苦八苦したもののどうにも納得いくものにならず……。来月までには、もう少し勉強しておくつもりです。
タグ:読書
posted by あんく at 21:12| Comment(0) | TrackBack(0) | ○月の本読み | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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