2006年11月09日

『道長の冒険 平安妖異伝』

道長の冒険
道長の冒険
posted with 簡単リンクくん at 2006.11. 9
平岩 弓枝著
新潮社 (2006.10)
通常24時間以内に発送します。


 賀茂川の流れまで凍らせてしまうほどの寒さにみまわれた京の都。踏絵節会(とうかのせちえ)が宮中でとりおこなわれようとするそのとき、藤原道長はなにかに引かれるように立ち上がり内裏を出た。歩み出たところに控えているのは、かつて道長とさまざまな怪異を解決した秦真比呂の従者と名乗る虎麿。とらえられた真比呂を助け出すため、道長は虎麿とともに旅立つ…

 平安の世を舞台にした冒険譚は、目の前に立ちはだかる怪異や、恐ろしげなる妖怪たちに阻まれながらも、しだいに目的地に近づいてゆきます。
 さっそうと勇猛果敢に難敵に挑む道長と、彼を懸命に助けようと奮闘する虎麿。なにごとにも寛大な主人と、愛嬌たっぷりの虎麿コンビが活躍するさまが非常に痛快です。
 さながら平安版ロード・オブ・ザ・リングというと大げさでしょうか?あれほど登場人物は多くないので、淡泊な感じもしますが、文庫本一冊でおさまるお話はすっきりと読める長さです。筋立てはまさにRPGそのもので、このまま一本のゲームになっても違和感はなさそう。それとも、挿し絵の雰囲気そのままに、子ども向けの絵本にしても面白そうな具合です。

 日本のできごとを背景にちりばめながらつづる冒険譚。つねづね読みたいと思っていたものに、やっと出会えたという気分です。

 シリーズ第2作目ですが、前作が短編連作集だったので、今回長編になっているとは思いませんでしたが、前作よりもこちらのほうが、おとぎ話のようで印象的でした。3作目、ぜひ書いてほしいです。
posted by あんく at 20:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 著者別 な〜は | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月07日

『水曜日の朝、午前三時』

水曜の朝、午前三時
水曜の朝、午前三時
posted with 簡単リンクくん at 2006. 9. 7
蓮見 圭一〔著〕
新潮社 (2001.11)
通常1-3週間以内に発送します。
 
 
 
 
 

 書店に置かれた文庫本の帯。飛行機の中で読み始めて、涙が止まらなかった、とかいうような、児玉清さんの推薦文が目にとまりました。
 週間ブックレビューで見た児玉さんの読書家ぶりがとても印象に残っていたので、興味をひかれて読んでみました。

 
 死をひかえた女性が、娘にあてて遺したテープで、かつて彼女が過ごした1970年のできごとを語る。大阪万博という熱病のような空気の中で、彼女がどう過ごし、だれと出会っていったのか……。
 
 独白の形をとりながら、母から娘へ語られる言葉には、一昔前を連想させる折り目正しさと品が漂います。一つの文字、一つの文句はありふれていながら、それらが紡ぎ合わされると、しだいに時間をさかのぼっていくような不思議な感覚にとらわれてゆきます。今ではない、まさしくかつてあったであろう時代の中に誘い込まれるような気分です。
 
 そう思いながらも、語りの中心となった万博の年代、その熱病にうかされたような日々を共有した人でなければ、ここにある、独特のにおいをかぎとることは難しいのかもしれないかもしれないとも感じました。
 涙を流すほどに、この空気に寄り添えなかったようです。 
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2006年08月31日

『アコギなのかリッパなのか』

アコギなのかリッパなのか
畠中 恵著
実業之日本社 (2006.1)
通常2-3日以内に発送します。


 政界を退いてなお、周囲への影響力絶大な元国会議員の大堂。彼の元には、現職議員やらなにやらが、なにかれとなく相談事をもちこんでくる。そんな困りごと処理にやられるのが、彼の事務所に勤務する、大学生兼事務員である佐倉聖。政治の裏側をかいま見つつ、ちょっとした謎解きが楽しい連作短編集。

 主人公の佐倉聖は、元暴走族の不良少年で、飄々として、そこそこの切れ者で、大物政治家たちを前にしても臆するところなく物を言う。周りも、少々型破りながら憎めない、愛すべき人物ばかり。
 お話にしても、政治家や選挙が題材だからといって、汚職だのといったドロドロしたものはなく、むしろ微笑ましい困りごとのたぐい。
 楽しく、さらっと読めました…と言いたいところですが、これがなぜか、やたらと時間がかかって、ページの進まないこと、進まないこと。

 謎解き要素がなんとも拍子抜けなことや、政治家事務所が舞台であることがあまり重要に思えなかったこと、それも確かにあります。でも、一番は、登場人物たちが最後まで好きになれなかったことが、ダメだった原因でしょうね。なんというか、「ほら、なんか変な人たちでしょ!!だから面白いよね!」と言われているような気すらして、どうにも乗り切れませんでした。
『ぬしさまへ』がとても面白かったので、期待しすぎたのかも。
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2006年08月22日

『雪えくぼ』

雪えくぼ
雪えくぼ
posted with 簡単リンクくん at 2006. 8.22
蜂谷 涼著
新潮社 (2006.6)
通常24時間以内に発送します。


 ひとときの甘さのあと、ひきちぎられるような心残りや、切なさがあとをひくような恋に身をやつした、4人の女性を描いた短編集。

 日清、日露戦争の時代を舞台にした作品ながら、地方を舞台にした作品もあり、時代小説のような、近代小説のような不思議な味わいがあります。今の時代を生きる者から見ると、足かせを負うているような、窮屈さに絡め取られているような印象がするものの、それぞれが、最後にはどこかはじめとは違う着地点に降り立ち、歩いていくのでどこかに開けていっているような感覚が残ります。
 名前を見て男性の作家さんだとばかり思っていたのですが、読み終わった背表紙側カバーの折り返しで、女性だと知って驚きました。どうりで、女性の描写がなんとも艶っぽいはずです。

 そして最後、短編それぞれの味わいを楽しんだあと、もう一つのお楽しみが。思い返せば、途中でいろいろ伏線があったのに、鈍い私はまったくそれに気づかず、すっかり作者の術中にはまってしまいましたが、これもまた楽し。
 再読してみると、また違う趣を味わえそうです。
 
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2006年08月09日

『平松洋子の台所』

平松洋子の台所
平松 洋子著
ブックマン社 (2001.7)
通常2-3日以内に発送します。


 表紙がなんともいい味なのです。四角いブリキの入れ物に、お米。その下には「「電子レンジ、捨てるよっ」ある日私は、〜(中略)〜家族の前でこう言い放った。」の文字。
 もう、これだけでなんだか「やった!」という気分になって、この本に出会えたことが嬉しくなるのです。

 ページをめくると、著者の台所にあるさまざまな道具が、写真とコラムで紹介されています。昔からゆるゆると使われてきたシンプルな道具たちは、日本各地のものもあれば、アジア各地、ごく普通のおうちで使われているものまで、どれもこれもがほんとに美しい!素朴な外観と、手になじんで使いやすそうなものが、ページをめくるたびに登場して、著者のセンスのよさに惚れ惚れ。もう見ているだけで幸せな心地になれて、台所にたってなにか料理をしてみたくなるから不思議です。

 こんな、味わいのある道具を使いこなせる人になりたいと思いつつ、我が家の台所を見ると、そのあまりの落差に……がっくり。洋風食器を処分して、ぜんぶ和食器にしたいと思いながらも、捨てるのがもったいなくて整理がつかないようじゃ、理想の台所にはほど遠いですね。いや、その前にごちゃごちゃした台所を、せめてもう少し整理しなくては……。
 シンプルなものがならんだ、清潔な台所。とりあえずは、本の中だけで堪能です。

 平松洋子さんを知ったのは、↓の本。旅先で出会う雑貨が、とにかく愛らしく、美しい!旅の楽しみの一つは買い物、しかもちょこっとした雑貨を見つけるのがなにより楽しい身としては、お手本のような一冊です。

旅で恋に落ちる瞬間
平松 洋子著
日本放送出版協会 (2002.4)
この本は現在お取り扱いできません。
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2006年07月31日

『快楽の伏流 鑑定医シャルル』

快楽の伏流
快楽の伏流
posted with 簡単リンクくん at 2006. 7.31
藤本 ひとみ著
集英社 (1997.7)
通常2-3日以内に発送します。


 図書館での本選びにつまったときは、今まで一度も読んだことのない作家さんの作品に挑戦してみることにしています。さんざっぱら悩んだあげく手に取ったのがこれ。

 フランスの法曹界では名の知れた名門・タルモン家のあるショレ市。そこで、一人暮らしの老女ばかりをねらった猟奇的な殺人事件が次々と起こる。タルモン家の当主・イザボーの娘であるベアトリスも、検察官としてこの事件に携わることになる。彼女に事件の鍵を与えるのは、傲慢不遜な態度で知られた、鑑定医シャルル。彼の助けを借りながら、ベアトリスが挑む事件は、次第に意外な方向へと広がっていく……。

 非常にグロテスクな場面がてんこ盛りです。殺人事件の背景にあるものや、やり口、後味のどれもが、陰鬱としかいいようのないものばかり。
 唯一、爽快感を感じさせてくれるのが、鑑定医シャルルの的確な推理です。皮肉屋で、利己的で、鋭すぎるほどの観察眼は、面と向かってふるわれると怖じ気づいてしまうでしょうが、端で見ている分にはクールで面白かった。しかも、ちゃんと弱い部分や、優しさのかけらもかいま見せるようなエピソードも盛り込まれ、またそこにほろっとさせられたり。
 西洋の古い洋館というのは、外から眺めるには美しいと思うのですが、どうにもその内側には怖いものがひそんでいるような気が、いつもしてしまいます。ここに登場するタルモン家にも、複雑に入り組んだ人間関係がもたらす陰がひそんでいます。こんな作品を読んだら、ますます洋館への苦手意識が強くなってしまいそうです……。

 1997年出版なので、10年ほど前の作品ですが、古さは感じません。実はこれ、鑑定シャルルが登場する作品としては3作目らしく、ほかのシリーズも読んでみたくなりました。初めて読んだ作家の一冊目が面白いと、ちょっと嬉しい気分になれますね。
posted by あんく at 21:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 著者別 な〜は | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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