2008年08月18日

『ラットレース』

ラットレース
ラットレース
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方波見 大志
ポプラ社
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 ここ半年くらい、すっかり読書から遠ざかっていました。というわけで、ライトノベルや、少年少女向けの本棚から読む本を選んで、ただいま読書リハビリ期間中。

 飼っていたインコのピヨ吉が死んでしまったと先輩の片里名から呼び出された中島。ピヨ吉の亡骸を見ていると、そこから半透明のなにかが浮かび上がってきた。それは、インコの姿とはかけ離れた、ジャージ姿の中年おやじだった……しかも、その姿は中島にしか見ることができない。このおやじはピヨ吉の魂なのか?オカルトに詳しい、中島のクラスメート岡部と、その友だち伊藤を交えた謎解きが始まる。

 いきなり、幽体離脱した魂の登場。しかも、それは半透明で、加齢臭もしそうな典型的なおやじ。しかもジャージ姿。もう、このじてんでこのお話がいったいどこに向かっていくのかまったく分からなくなりました。インコの魂がなにゆえおじさんなのか、なぜ彼は中島にしか見ることができないのか。岡部と伊藤、そして片里名、中島がともに見つけ、行き着く先はどこなのか。

  昨今のライトノベルやそれに類する作品はかなり読み応えがあって、内容もなかなかシビアなものが多いのですが、この『ラットレース』も、決しておもしろくて楽しいテーマとはいえません。
 ここに出てくる、岡部や伊藤は成績優秀ながら人との距離をうまくとれず、不思議なコンビとしてクラスでも少し浮いている存在として描かれているし、片里名もクラスの集団から少し離れて、クールな美人として名を馳せている。中島はその彼女の下僕的存在として認識されているという具合に、だれもが“普通の高校生”から微妙にずれている。彼らだからこそ、半透明のおやじとかかわることができるともいえるし、彼らこそがそれとかかわらなければならないものでるようにも思えてきます。
 人との距離のとりかたに、大人が思っている以上に複雑なものがあるし、必要以上に難しくしてしまっているところもあるのかなと思ってみたり。

 今どきの子どもたちは、つくづく生きにくい世の中であがいていることに思いを馳せつつも、そこからなにかを見いだして、もう一つ違う段階に上っていってほしいなと思うことしきりです。
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2008年02月07日

『無双十文字槍 鬼坊主末法帖』

無双十文字槍―鬼坊主末法帖
犬飼 六岐
徳間書店 (2007/08)
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 いや、もう文句なしにおもしろいです!!

 背丈は六尺を越える大男。両脇に一人ずつ、計二人の大人を抱えて山道を駆け続けるほどの剛力の持ち主で、宝蔵院流十文字槍の使い手。俗なことも大好きだが、権力に媚びることもなく、己の道をつきすすむ、不覚という僧侶が主人公です。
 これ以上ないほどの破れ寺に住みついた僧侶の不覚は、特定の檀家を持たず、寺に出入りする瓦版売りの佐七が持ち込んでくる頼まれごとを引き受けたり、事情のある亡骸を弔ったりしながら暮らしています。
 この破天荒な僧侶・不覚がまず魅力的。
 ものすごーく大きな鼻○そ(←別にいいけれど、文字にするのがためらわれたので、伏せ字です…)が取れて、それをどうしようか真剣に悩んだかと思うと、損を承知で筋を通したり。読めば読むだけ、不覚のおもしろさに取り込まれてゆきます。

 10の短編からなる連作集ですが、十人十色ならぬ、十話十色とでもいいたくなるほど多彩で、どれもこれもがおもしろい。物語の起こりも、展開のしかたも、出てくる人たちも、どれ一つとして既視感を感じさせないつくりは、お見事の一言。
 時代小説にも、まだまだ新しいものがでてくる余地があると思うと、わくわくしてきます。

 ペンネームの由来についてふれたインタビュー記事を、ネットで見ました。ロッキーという名前の犬を飼っているので、「犬飼六岐(いぬかいろっき)」だとか……まさか、こういう意味とは思ってもみませんでした。さすが、破天荒で一筋縄ではいかない人物を、こんなに活き活きと描く作家さんだけあります。

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2007年07月16日

『香港の甘い豆腐』

香港の甘い豆腐
香港の甘い豆腐
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大島 真寿美
理論社 (2004/10)
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 母と二人暮らしの彩美。高校を留年しそうになったとき、母が起こした行動は思いがけないものだった。亡くなったと聞かされていた父親に会うために、夏休み、めったなことでは仕事を休んでくれない母が、香港へ行くと言い出した。父親が生きている、しかも香港で。香港の街に立ち、歩き、食べ、彩美の足が地に着いていく時間を追体験するようなお話。

 タイトルは前から見知っていたし、手にも何度もとってみたのですが、そこに“香港”という言葉が含まれているというだけで敬遠してきました。思い入れ強い場所がどんなふうに描かれているのか、つい身構えてしまうんですね。自分のイメージとずれていたりすると、気になって物語に身が入らないし……なんて考える必要もなかった。

 しばらく香港にホームステイすると、日本で待つ祖母に伝える彩美が使った言葉は「元気の渦」でした。そう、香港にはなんだか分からないけれど、とてつもなくエネルギッシュな力があった。うん、確かに「元気の渦」なのです。
 香港の街に初めて立つ、主人公の彩美。彼女が行く観光スポットは、ビクトリアピークとスターフェリーくらい。あとは、街中にあるジューススタンドで搾りたて生果汁を飲んで、雲呑麺を食べて、片言の広東語を覚えて。それだけなのに、どこからか力が湧いてくる。読んでいると、自分も香港をふらふらと歩いているような気になってきます。

 初めての香港。母親や、祖父母、学校という日常から抜け出せたとき、初めて周りの風景が色を持っていく。自分が知りたいこと、聞きたいこと、伝えたいことが見えてくる。忙しい香港の街は、親切に先回りして行き先を教えてくれたりはしない。自分のことは自分で。なにもない個人が、裸一貫で自分を形作っていく場所。
 主人公が少しずつ変わっていったように、読み終わったらちょっと元気が出てきたような気分になります。

 読み終わってから眠りについたせいか、この夜は香港でコンサートに行っている夢を見ました。なんだか無性に楽しい夢で、目が覚めてからもいい気分がしばらく続いたけれど、これも「元気の渦」のおかげ?
タグ:読書
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2007年07月12日

『弥勒の月』

弥勒の月
弥勒の月
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あさの あつこ
光文社 (2006/02/22)
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 この著者に時代小説作品があるということを初めて知ったのが、つい最近。興味をそそられて早速、図書館で借りてみたところ、これがとてつもなく面白い!

 切れ者すぎるせいか、捕り方にやる気や情熱がないように見える同心の信次郎。信次郎の父である先代から手札を受けている、岡っ引きの伊佐治。
 ある日、妻に身投げされた小間物問屋の主である遠野屋の清之介から、事件の真相を探ってほしいと頼まれる。妻が身投げする理由がまったく見あたらないという清之介。ありきたりな事件の裏にあるものはなにか。
 果たして、信次郎と伊佐治はことの真実を突き止められるのか。

 同心の信次郎の飄々とした切れ者ぶりと、なにごとにもそつのない清之介。腹に一物も二物もありそうな二人の掛け合いが絶妙で、うまい漫才でも見ているよう。それを、横で肝を冷やしたり、頭に血を上らせたりしながら、見守る伊佐治の温かい目線でときに和んだり。

 後半で、その軽妙さとはうらはらに、思っていた以上に重い真実が明らかになっていくものの、辛い気持ちよりも先を読みたいという気持ちがまさって、どんどん読み進んでいきました。
 最後も、めでたし、めでたしとは決して言えませんが、それでも信次郎や伊佐治の働きが、なにかしらを変えることができたんじゃないかと思えるものでした。
 闇を背負って生きることの重さや、簡単にやり直せないしがらみというものは、これほどまでにしんどいものなのか……それと同時に、一筋の光だけで人は生きてゆけることもあるのだと思わずにはいられません。

 これから信次郎がどんな同心になってゆくのか、変わっていく様にしろ、変わらずにいる姿にしろ、その後を見てみたくなりました。

 ネットで他の方の感想を拾い読みしてみましたが、意外にも賛否両論という感じでした。個人的には衝撃的と言っていいほどの面白さだったので、大絶賛の嵐かと思っていたのですが……。
 やはり、時代小説というのは、どことなくとっつきにくさがあるんでしょうかね?
タグ:読書
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2007年04月11日

『彼女のこんだて帖』

彼女のこんだて帖
角田 光代著 / ベターホーム協会編集・料理
ベターホーム出版局 (2006.9)
通常24時間以内に発送します。


 角田光代はとっても好きな作家さんです。にもかかわらず、いつも申し訳ない気持ちでいます。というのも、彼女の小説よりもエッセイのほうがずっと、ずっと好きだからです。小説を書く人にとっては、とっても失礼なんじゃないかといつも思っているわけです。

 しかし、今回ばかりはそんな後ろめたさも感じませんでした。料理にまつわる短編15作。1つ目のお話に登場した人が、2つ目でメインになり、またそこに現れた人についてのお話が3つ目で語られる。食べ物や、料理を作ることでつながってゆくお話が多彩で、どんどん次が読みたくなって、一気に読み終えてしまったくらいですから。

 角田光代という作家さんは、ほんとうに食べることが好きなんでしょうね。食べる場面にしろ、料理を作る場面にしろ、どちらもがいつも丁寧に描いてあります。おまけに、どんな気分であっても、食べることが苦痛として登場しないし、おざなりにされていない。食べると元気が出てくる、作るとなにかを忘れて気持ちが晴れてゆく、そんなふうな描かれ方が多くてほっとします。
 読むと、お話に登場するものを食べたくなる以上に、なにか無性に料理をしたくなってくるんです。この本は、そんな欲求をしっかり満たすべく、レシピまで丁寧に紹介されているという優れもの。

 料理本としても、本棚に一冊おいておきたくなりました。
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2007年03月18日

『翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった』

翻訳家じゃなくてカレー屋になるはずだった
金原 瑞人著
牧野出版 (2005.12)
通常2-3日以内に発送します。


 次になにを読もうか考えるときに、“つながり”で決めることがけっこうあります。三浦しをんのエッセイで紹介されていたヤング・アダルト小説の訳者が、本作の著者である金原瑞人です。
 そんなとっかかりで読み始めると、「赤木かんこ」という名前が出てきてさらに驚きました。最近、図書館で見て気になっていた本にあったのがこの名前。いつか読んでみたいと思っている、さまざまなお話をテーマ別に集めた児童書の選者だったのです。著者は大学時代から彼女と親交があったとか。本を読んでいて、こういう縁に出会うのは嬉しいものです。

 内容は、翻訳という仕事にまつわるお話と、外国語を日本語にうつしかえていく作業の中に起こることなど。ヤングアダルト小説の翻訳が多い著者だけに、文体もなじみやすい。20代の人が書いている文章と言われれば、そうですかと納得してしまいそうな、軽やかさで、読みやすくて楽しいエッセイでした。

 この訳者が翻訳したものなら、きっと面白いだろうから読んでみたくなる。海外作品をよく読むという方が、以前テレビでそんなことをおっしゃってましたが、その気持ち、この本を読んで分かったような気がしました。
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2007年01月27日

『黍の花ゆれる』

黍の花ゆれる
黍の花ゆれる
posted with 簡単リンクくん at 2007. 1.27
植松 三十里著
講談社 (2005.6)
通常2-3日以内に発送します。


 幕末の激動の中、西郷隆盛は藩にかくまわれる形で奄美の地を踏んだ。そこで、島の愛加那という女性を“島妻”として迎え、薩摩に戻るまでの数年を過ごす。うちひしがれそうになる西郷を、妻として気丈に支え続けた女性の物語。

 歴史にとんと疎いので、西郷さんが奄美に暮らしたことも、その背景も知らないまま読んだおかげで、新鮮な驚きをもって読み終えました。あくまで小説ではありますが、愛加那という女性の目を通して見えたであろう西郷隆盛像にふれて、やっと彼が生身の人だったんだなという思いを感じたり。
 時代の渦に巻き込まれながらも一歩距離をおいたところで生きていた人々のほうが実は多かったんだと改めて気づくと、なんだかほっとしたような気分にすらなります。幕末のきな臭いイメージが少し、違うものに見えてくるような気もします。

 熱さや激しさはないけれど、筋の一本通った、意志の強さを感じさせる文はきりりと美しく、もっと多くの作品を書いてほしい作家さんです。

 余談ですが、本屋さんでぱらぱらと見た月刊誌に、平岩弓枝の『御宿かわせみ』シリーズがついに明治時代に突入とありました。文庫本になってから買い求めているので、もうしばらく明治時代はお預けでしょうが、いったいどんなふうになっているのか、気になります。神林東吾はなんとなく、彰義隊にでも入ってしまいそうだったので心配していたのですが、あの面々はどんなふうに幕末期を乗り越えていったんでしょう?あぁ、早く読みたい!

 
 
 

 
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2006年10月25日

『セーラー服と機関銃』

セーラー服と機関銃
赤川 次郎〔著〕
角川書店 (2006.9)
通常24時間以内に発送します。


 映画は見ていたも、原作は初めて読みました。主人公である星泉の言葉遣いにちょっと古めかしいところがぽつぽつと見えますが、全体的にはさほど違和感もなく読めてしまうので、この作品が初めて発表されたのが、すでに28年前(!)、1978年だということを知って心底驚きました。
 事件の発端、意外な事実、身の危険、真実の糸口、謎の人物、そしてラスト、短いながら端的な言葉ですっきりとまとまって、楽しめて、ほろっと悲しい気分も味わいながら、元気もちょっと出る。
 中高生のころ、むさぼるように赤川次郎作品を読みましたが、そのころのわくわく感は今も健在でした。 
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2006年10月18日

『脇役 慶次郎覚書』

脇役
脇役
posted with 簡単リンクくん at 2006.10.18
北原 亜以子著
新潮社 (2006.10)
通常24時間以内に発送します。


 NHKでもドラマ化された人気シリーズ『慶次郎縁側日記』の番外編とでもいうべき作品です。

 慶次郎縁側日記は、もと定町廻り同心の森口慶次郎が、彼の元に持ち込まれるさまざまな事件を解決してゆく、人情味豊かな群像時代劇です。その慶次郎を囲む人々、いつもは脇役の面々が主役となる連作集で、本編を読んだことのある人はもとより、初めての人にも十分楽しめる作品になっているのは、おみごとです。
 北原亞以子という作家さんが描く人物は、総じて“いい人”たちですが、そこは人。すねに傷あり、心に陰あり。そこをほのかな光で照らすようなやわらかさでもって描いてゆく作者のやり方は、誰に対しても、どの場面でも健在なので、始めから終わりまで心地よい気持ちで読み終えられます。
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2006年09月20日

『エンジェル』

エンジェル
エンジェル
posted with 簡単リンクくん at 2006. 9.20
石田 衣良著
集英社 (1999.11)
通常2-3日以内に発送します。


 テレビで見かけるたびに、読んでみたいと思い続けてきた作家さんの一人です。コメンテーターとして見る印象と、書店に並ぶ本のイメージがどうも結びつかなかったんですが、実際に読んでみてもっとその印象が強くなりました。テレビで見る静かな語り口からは想像できない、いい意味で裏切られた感がいっぱいの読後感でした。

 目の下に広がる光景。それは、自分が何者かに埋められているところだった。いったいなにが起こったのか。青年実業家の純一が、自分の短い人生をたどり、その果てに見たものは……

 始まりから、こんなふうに驚かされ、あとはただただお話に圧倒されながら、引っぱられて最後まで一気に駆け抜けるように読み切りました。途方もない絵空事に、読む者をわすづかみにして離さない説得力を持たせる巧さ、敬服の一語に尽きます。
 死後の世界というものがあり、魂となっても人が存在し続けることができたなら、どんな景色を見ることができるのだろう。死してなお、人として在ることに意味があるとしたら……。
 もしも、死の後に待ち受ける世界がこの作品に描かれたようなものであったなら、それはそれで幸せなんじゃないかと、そう思えました。
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2006年09月10日

『ハチミツとクローバー』

ハチミツとクローバー 5
羽海野 チカ著
集英社 (2003.11)
通常24時間以内に発送します。


 映画化されたとき、初めて『ハチミツとクローバー』という漫画があるのを知って、それ以来とっても気になってました。が、何巻もあるコミックを買うほどには決心もつかず、うだうだしていたら、たまたま1巻だけを見る機会に恵まれ……そのまま、一気に9巻全部お買いあげ〜。あぁ……。さすがにいい年になると、漫画を買うことそのものはいいとして、レジでお金を払っているそのときが、もうこの上なく恥ずかしくて、今回も勇気がいりましたわ〜。

 夜9時から読み始めて、9巻全部を読み終わったのが深夜というか、早朝というか3時半。6時間半は390分なので、1巻につき43分。
 自分が過ごした大学時代は、物語のように劇的なできごとがあったわけではないけれど、些細な友だちとのやりとりや、行ったところ、食べたもの、いっしょに見た映画、そのときに持っていたもの、着ていた服、表情、仕草、そういうものが次から次、怒濤のスライドショーのように目の前によみがえってくるような気分でした。ひとしきり読んでは涙して、雰囲気に浸りして、先がすごく読みたいのになかなか進めなくて。
 大学時代はたった4年間しかなかったのに、最近の4年間と比べてみても、あのころの思い出や記憶のほうが何倍も多いような感じがします。2〜3日だけ、旅行のように時間をもどってあのときの時間を再体験してみたい気も。

 大学生の群像劇。かっこわるくて、なにかに一所懸命で、しょっぱい…高校で初めて読んで、大学時代には数え切れないほど読み直した、宮本輝の『青が散る』をちょっと思い出しました。
青が散る
青が散る
posted with 簡単リンクくん at 2006. 9.10
宮本 輝著
文芸春秋 (1985.11)
通常2-3日以内に発送します。
 

※おととい最終巻の10巻が発売されましたが、一気買いしたときは9巻までしかなかったので、文中は9巻で通しています。画像は、一番好きなキャラ、竹本くんで。
posted by あんく at 13:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 著者別 あ〜か | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月23日

『わたしを離さないで』

わたしを離さないで
カズオ・イシグロ著 / 土屋 政雄訳
早川書房 (2006.4)
通常24時間以内に発送します。


 とにかく先入観なしで読んでほしい、というようなごくごく短い書評が週刊誌に載っていました。こうまで言われたら気になる、読んでみたいと思うのが人情というもの。

 物語は、ある女性の一人称で語られ始めます。彼女の話すことは、いたって当たり前に見えるものばかり。話の矛先がどこに向かおうとしているのか、なにが目的なのか、そしてなにが語られようとしているのか、なにもかもが分からないまま。
 ひとしきり、彼女の話が進むにつれ、少しずつ、少しずつ霞の向こうにあるものが、ちらちらと見え始めてきます。決してあからさまではなく、ごくふつうの顔をしたままなのに、そこになにかひっかかりを感じながら、さらに読み進んでいく、また何かが見える。そして、小さな違和感を覚え、また進む。
 そうして繰り返された時間の向こうには、非現実と現実とがないまぜになったような全景が見え、そして静かに話が終わります。あくまでも、静かに、そっと。

 ある程度、そこに描かれたものの骨組みが見えてきたところがもっとも衝撃的でした。小説というのは、こういう形でも書けるんだ……それが、一番素直な感想かもしれません。

 翻訳物には苦手意識があるのですが、おもしろい書評に出会うと、がぜん翻訳物にも興味がわいてきます。久しぶりの翻訳物、おもしろかったです。
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2006年07月20日

『おかあさんと旅をしよー。』

おかあさんと旅をしよー。
ムラマツ エリコ著 / なかがわ みどり著
メディアファクトリー (2006.7)
通常24時間以内に発送します。


 大好きな、k.m.p.の新刊です!
 今まで、著者のお二人がいっしょに旅をしてきた記録は何冊かありましたが、今回はそこにそれぞれのお母さんが加わって、いつもとはひと味違った内容です。

 行き先はイタリア、期間は2週間くらい(?)、親孝行旅行なので費用は娘二人持ち。う〜ん、すごい!すばらしい。お母さんお二人、さぞ嬉しかったでしょうね。だって、2週間ですよ、イタリアですよ。私もここ2年くらいは年に1回くらいですが、両親と温泉旅行に行ってますが、1泊2日でけっこうへとへとです。疲れてるんじゃないだろうか?宿でゆっくり休めただろうか?食事は口に合ってるかな?なんて、次々に心配事がわいてきて、気疲れしてしまうのです。
 もちろん、この作品の中にもそんな気苦労もちらりとでてきて、うんうんと頷いたり。お母さんへの細やかな気配りに感心したり。
 でも、いちばん楽しめたのはお母さんお二人の可愛らしさです。子の心を知ってか、知らずか、しっかりマイペースで旅を楽しんでらっしゃる様子は、イラスト効果とも相まって愛らしかった!
 いつものイラストぎっしり、文字みっちりの紙面とは少し趣が違いますが、やっぱりk.m.p.はやめられません。
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2006年06月01日

『秋の金魚』

秋の金魚
秋の金魚
posted with 簡単リンクくん at 2006. 6. 1
河治 和香著
小学館 (2003.11)
通常2-3日以内に発送します。


 幼いころ、父は母と兄、そして同じ長屋に住む朋輩をも斬って自害して果てた。その惨劇の中、たった一人残され己を「乱心物の娘」と戒めながら生きてきた女性・留喜(るき)。彼女に深くかかわる二人の男性を軸にしながら、黒船の訪れる幕末を舞台に語られる物語です。

 題名から漂う美しさとほどよくちりばめながら、一人の女性の哀しみをたたえた人生を追った物語は、女性作家の手ならではの味わいです。
 ことに留喜と夫・磐吉のもどかしいほどの関係は、読み進むほどに切なさを覚えます。生きて行く道というものがあるならば、交わりそうで、交わららず、それでいて、決して離れることがない道というものがあるのかもしれません。
 夏の風物詩の金魚と、生き残ってしまった自分を重ねながら、時代の波の中で翻弄される男たちとは違い、自分なりの生き方を貫いた留喜という女性の生き方。哀しみに満ちたものかもしれませんが、それは決して不幸せと同じ意味ではない……そう感じられる結末に救われました。

 河治和香という作家さん、この作品ともう一本、時代小説を書かれているようですが、もっとたくさん読んでみたいものです。
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2006年05月23日

『ワイルド・ソウル』

ワイルド・ソウル 上
垣根 涼介〔著〕
幻冬舎 (2006.4)
通常24時間以内に発送します。

ワイルド・ソウル 下
垣根 涼介〔著〕
幻冬舎 (2006.4)
通常24時間以内に発送します。


 戦後、外務省主導による大規模な移民政策が行われ、多くの地域に日本人が移住していった。しかし、そこに待っていたのは作物も実らない過酷な大地と自然。その中で、多くの日本人が命を落とし、農地を捨てて離散していった……。そんな情景から物語りは始まります。

 移民の時代に端を発した大事件、日系一世たちの遺恨を晴らすための一大計画が実行に移される過程と次々に起こるできごとにハラハラしながら、それぞれの人物たちに思いをはせ、胸がつまるような思いで一気に読み進みました。
 ここに描かれている物語はフィクションですが、たった50年ほど前に起こったできごとを基にしているということを思うと、果たして現実は……。
 垣根涼介が、渾身の力をこめた復讐犯罪劇は、その根底に脈々と流れる憤怒の情を映しだしながらも、あくまで明るく、痛快です。すべてが終わり、計画にかかわった人々も、それぞれの場所に収まっていくのを見届けた後には爽快感すら漂ってくるのです。

 善悪で分けるなら“悪(ワル)”に属し、非の打ち所がないほど緻密な計画をたてて、犯罪を実行していく面々。そういう人物を描かせたら、垣根涼介の文章は本の中で踊っているように息づいてくる。まさに、その著者の面目躍如といった感のある一作です。
posted by あんく at 22:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 著者別 あ〜か | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月02日

『神隠し三人娘』

神隠し三人娘
神隠し三人娘
posted with 簡単リンクくん at 2006. 5. 2
赤川 次郎著
集英社 (2002.3)
通常2-3日以内に発送します。


 赤川次郎さん、デビューされてからずいぶんたっていると思うのですが、文章のみずみずしさがこんなにも変わらないのはすごいことです。
 短編でありながら、コミカルで、ファンタジックで、どことなく哀しみが漂う作風、ときどき無性に読みたくなる作家さんです。
posted by あんく at 23:10| Comment(1) | TrackBack(0) | 著者別 あ〜か | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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