2007年07月22日

映画『夕凪の街 桜の国』

『夕凪の街 桜の国』(2007年・日本)
 監督:佐々部清
 出演:田中麗奈、麻生久美子、吉沢悠、堺正章、藤村志保


 非常に話題になった、こうの史代による同名コミックの映画化。

 前半の舞台になるのは、戦後の復興が進む昭和33年の広島。
 そして後半、平成19年。広島をめぐる旅でふたつの時代がつながってゆく。

 原作コミックは一度読んだだけですが、第一印象は原作のイメージを大切にしながら、丁寧で誠実につくられているなというものでした。

 特に前半、主人公である皆実(みなみ)が被爆による心の傷をかかえ、生きていたい、幸せでありたいと思いながらも、少しずつ死の淵にたぐり寄せられていく姿は涙なしには見られませんでした。

「原爆は落ちたんじゃない。落とされたんよ。だれかが死ねばいいと思って落とされたんよ。」と言った皆実。
 確かに事実ですが、一面的な見方に思えたし、そんなふうに考えたら自分がもっとしんどくなるのに、なぜそんなふうに考えるんだろう。それは、映画だけじゃなく、コミックを読んだときから感じていた違和感だったのかもしれませんが、なんとなくひっかかりを感じもしました。
 
 今の広島の街は当時とはすっかり変わり、目をこらさなければ原爆の痕跡など見あたりません。でも、当時は銭湯のシーンでも描かれていたように、当たり前に原爆を思い起こさせるものが日常的に存在していた。周りをみれば、ほとんどの人が戦争や原爆でなんらかの傷を負っている。そんな中で生きていたからこその、実感であり、幼くして被爆し、なにもない中で再び生き始めるための、皆実なりの必死の結論だったのでしょう。
 そう思うと、やっとひっかかりが薄らいだ気がします。

 前半でぐっと感情移入してしまったせいか、後半は思いの外淡々と見てしまいました。
 たぶん、20代にとって被爆世代は、親よりも祖父母世代のほうが多いという感覚が私にあるぶん、七波たちの年齢設定が気になってしかたなかったせいもあるでしょう。実際、物語を追いながら、登場人物たちの年齢を何回も足し引きしてました……。
 七波という現代の女性が、自分の過去を振り返るきっかけが、広島だったわけですが、そこに強い必然性のようなものは残念ながら感じられませんでした。
 後半にももっと涙を搾られるかと思っていたので、意外な気もしました。
 「泣ける」という惹句は嫌いですが、もう少し泣かせてほしかった気もします。

 とはいえ、原爆だけでなく、あの戦争で亡くなった多くの方々、そして苦しい時代を生き抜いてきた方々を思うきっかけになるであろう、誠実な作品であることは間違いないと思います。

夕凪の街桜の国
夕凪の街桜の国
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こうの 史代
双葉社 (2004/10)
売り上げランキング: 48



 劇中の広島弁、広島県人としては気になるところでしたが、みなさんお上手でした。もちろん、ところどころ違うかなと思うところはありますが、演じる方はずいぶん大変だったんじゃないかとお察しします。なかでも、打越役の吉沢悠さんはかなり自然な感じでした。強いていうなら、皆実を呼ぶときに「君」じゃなく「あんた」(←イントネーションは動物の「ラッコ」みたいな感じかな?)を使ってくれるとなおよかったかと。
 見慣れた風景がスクリーンに映るのは、なんだか不思議な気分でした。特に、市街地を(路面)電車が走る風景では、けっこう広島も都会に見えますね。
 
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2007年07月05日

映画『ジョゼと虎と魚たち』

ジョゼと虎と魚たち(通常版)

『ジョゼと虎と魚たち』2003年・日本
 監督:犬童一心
 出演:妻夫木聡、池脇千鶴、上野樹里、新屋英子


 長らく見たいなと思っていた作品が、期待していたとおりにいいものだったときの気分は心地いいものです。
 強烈な存在感を見せるジョゼとおばあ。ひょんなことから、彼女たちと知り合った恒夫との関係が淡々と、ときにおかしく描かれます。

 “こわれもん(壊れ物)”と言われながら、猫が見たい、花が見たい、だから散歩に行かなければならないと言うジョゼ。見たいもの、知りたいもの、ほしいもの、そして今いる場所がどこなのかがちゃんと分かっている彼女が、とても眩しく見えてきます。
 息をつめるように生きていたジョゼが、少しずつ水面に浮かび上がるように元気になっていく姿が、眩しい。特にラスト、彼女の姿は勇ましくて、力強くて、泣けてきました

 本編の余韻にひたりながら、そのまま一気に楽しんだのがコメンタリー。犬童監督と、主演の二人が撮影中の裏話や、その場面について感想を言い合ったり、ちょっと見るつもりが気づいたらエンドロールまで見直してました。
 犬童監督がしみじみ「いい顔だねぇ」とか、「この場面がいいんだよね」と映画愛を炸裂させている横で、役のときよりずっとほんわかして愛らしい語り口の池脇千鶴さん、そして優等生っぽいイメージだったけれど、素は意外に普通の若者だった妻夫木さん。
 こっちも必見(必聴?)。
タグ:映画
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2007年06月23日

映画『キサラギ』

『キサラギ』2007年・日本
 監督:佐藤祐市
 出演:小栗旬、ユースケ・サンタマリア、
    小出恵介、塚地武雄、香川照之


 冬のある日、人気のないビルの屋上に姿を見せた5人。ファンサイトの掲示板で知り合った彼らは、自殺した清純派アイドル、如月ミキの一周忌をともに過ごすために集まった。
 和気あいあいと思い出を語り合おうと始まった会は、果たしてどうなるのか。
 5人の濃い面々がくりひろげる、密室劇。

 いわゆる、密室ミステリーの類なのでしょうが、謎解きとしては決して巧い出来ではありません。もし、純然たるミステリーとしてこれを小説なりで読んだら、肩すかしをくったように思うかもしれません。
 でも、だからこそ観客が少し考えると次の一手の答えが分かるようにできている。次はこうくるぞ、くるぞ、と思っているところに、ズバッと直球ストライクが投げ込まれるような心地よさ。やっぱりこうきたか!とにんまりすると、さらに次の仕掛けが。劇中の会話や、言葉、小道具にちゃんとヒントが仕込まれていることに気づくと、次はこれかな、あれかなとどんどん楽しさが加速していきます。
 超人的な能力をもった名探偵が、一気に謎解きをしてくれる気持ちよさとはまた別の、ちょっとした爽快感です。

 そして、この集まりの結末を見届けた後、爽快感とはまた別のふっとした和らいだ余韻が漂います。
 時間が流れることも、なにかとかかわることも、偶然ではなくすべて必然なのかもしれない。

 ちょっとまた元気にやってみようか…そう、思いたくなる一本です。


 密室劇で、謎解き。お話を追いながら『12人の優しい日本人』がたびたび思い浮かびました。脚本は映画化を見こして舞台用に書かれたものだった、という説明が公式サイトにあって、なんだか納得。


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2007年05月07日

映画『クレヨンしんちゃん 歌うケツだけ爆弾』

『クレヨンしんちゃん 歌うケツだけ爆弾』2007年・日本
 監督:ムトウユージ
 声:矢島晶子、ならはしみき、藤原啓治、こおろぎさとみ


 宇宙から落ちてきた爆弾が、ひょんなことから野原家の飼い犬であるシロのお尻にくっついてしまった。地球をも吹き飛ばしてしまうほどの威力を持つ爆弾をめぐり、国際宇宙研究センターと謎の集団がシロを連れ去ろうとやってくる。果たして、しんのすけはシロを守り抜くことができるのか!

 シロが活躍するお話は楽しいし、シロを守ろうとするしんちゃんは相変わらずかわいいし、ほろりとしたり、笑ったり楽しいには変わりないんですが、どうにも盛り上がりきらなかったなという気分がぬぐえません。
 シロのお尻にくっついた爆弾と歌の関係も、せっかくおもしろくなりそうなのに、あんまり触れられないままに終わってしまい、しかけが機能しきれずに終わったのがとっても残念。
 そういえば、劇場全体が大笑いするような場面がほとんどなかった。クレヨンしんちゃんを劇場で見るのは3本目ですが、前に見たときは、子どもたちが大笑いしていて、それにつられて大人も笑って、劇場中で声を上げて喜ぶなんてことがたびたびあったのに、今回はそれがなかったような気がします。

 そしてもう一つは疾走感かな?いつもの、クレヨンしんちゃん映画にある、スピード感たっぷりの追いかけっこが好きなので、それが少ない今作品はおとなしく思えたのかもしれません。
 でも、やっぱり来年もこの時期になると、クレしんを見たくなっちゃうんだろうな。

 これを見た日は、朝いちばん8時からの上映。モーニングショーは割り引きもあるしで、チケット売り場は長蛇の列でした。しかし、朝8時から『バベル』や『ハンニバル・ライジング』を見る人もかなりたくさんいらっしゃいました。人の好みはさまざまですが、朝からねぇ……。



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2007年04月29日

映画『バベル』

『バベル』2006年・アメリカ
 監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
 出演:ブラッド・ピッド、ケイト・ブランシェット、アドリアナ・バザーラ、役所広司、菊地凛子


 モロッコに暮らす羊飼いの一家がコヨーテ退治用にライフルを手に入れるところからお話が始まる。アメリカ、メキシコ、日本、そしてモロッコの4つの家族の物語が、遠く離れながらも同じ時間と、少しの結びつきをもって描かれる。

 それぞれの家族のつながり方に、ちょっと無理があるかなという気がなきにしもあらず。作りすぎず、もっと些細な関わり方にしてもよかったのかなと思ったところもあります。なんだかひっかかる。
 が、それでもそれぞれのエピソードのつながり方や、場面場面が切り替わってゆく流れは自然で、すんなりと物語に誘い込まれて、143分という長尺ながら心地よい気分で見終っただけに、もうちょっとで好きになれそうで、なれない、もったいない作品という気分です。

 日本の部分は、演じている人が(おそらく)みな日本人で、風景も東京であるだけに、彼らの行動の微妙な違和感が気になってしかたありませんでした。特に、高校生の女の子にいきなりキスされたり、あからさまな行動に出られたりしたときに見せた男の人の反応が、あまりにシリアスすぎてびっくり。驚きつつも、笑ってごまかすあたりが、ありそうな反応じゃないかと思うのですが。
 外国の人から見た日本人像なのか、それとも監督自身が表現したかったお話を日本編にあてはめただけなのか。

 もうひとつ気になったのが、アメリカ人夫妻と、彼らと同じツアーの参加者たち。不測の事態で混乱しているのは分かるとしても、モロッコの片田舎で見せた不遜にすら見える態度。一方的な要求のしかた。もしかしてこれは、アメリカを嫌いになるための映画なんじゃないかと思ったほどです。アメリカ人夫妻をつなぎとしてさらりと描くだけでよかったようにも思うし、せっかくブラッド・ピッドとケイト・ブランシェットというスター二人ならもっと違う役割があってもよかったはず。

 菊地凛子の存在感も印象的でしたが、いちばん目をひいたのは、暖かな眼差しと、穏やかな佇まいをみせるメキシコ人のベビーシッターを演じたアドリアナ・バザーラ。もう一度見るなら、メキシコ編部分だけをつなげて見てみたい気分です。

 
 それにしても、東京の夜景には圧倒されました。地方に住む身には、あれが同じ国の風景とはとても信じられません……
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2007年03月04日

『天使』

『天使』(2005年・日本)
  監督:宮坂まゆみ
  出演:深田恭子、内田朝陽、永瀬正敏、永作博美


 劇場で予告を見て気になっていた作品を、レンタルで見てみました。

 天使の活躍で、みんなが幸せになるのかと思いきや、天使はただ思うがままにふんわり、ふわふわ漂っているだけ。ジントニックが好きで、かわいいものに興味しんしんで、天衣無縫、純真無垢そのまんま。猫のように、思いつくままふらりと姿を現しては、また消える。奇跡なんか起こさない天使が、ちょっと目新しくてかわいらしいの一言に尽きます。
 そして、その天使を演じる深田恭子が可愛いのなんの!!これがほんとうの姿ですと言われても納得してしまいそうなほど、はまり役でした。もし天使に会えるのなら、深キョンバージョンでお願いしたいほど。天使をこんなに自然に演じられる人は、そうそういないよね。

 そのほか、永瀬正敏や永作博美、売れっ子子役の森迫永依、泉谷しげる、鰐淵晴子などなど、出演陣もうまくて、地味にすら見える日常が淡々と描かれているところも、天使という非現実と対称的で面白いのですが、その彼らが暮らす町の景色がまたなんともいい色合いでした。
 東京が舞台ということですが、高層ビルや、きらきらしたネオンもなく、古びたアパートや、近代的とはいいがたい図書館、ありふれた保育園と、時代を感じさせる戸建ての家……そこここに、毎日息づく日常を見つめる目線にほっとさせられます。
 
 最後、家々の灯りでほんのり橙色になった雪景色がきれいに見えるのも、このふんわりとした作風のおかげなんでしょう。

 一時、ホラーやトラウマ物全盛だったころからすると、またこういった作品が邦画に多くなってきたのは嬉しいですね。 
 
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2006年10月14日

『イルマーレ』

『イルマーレ』原題:The Lake House(2006年・アメリカ)
 監督:アレハンドロ・アグレスティ
 出演:キアヌ・リーブス、サンドラ・ブロック、クリストファー・プラマー


 湖畔に立つ家に越してきたアレックス(キアヌ・リーブス)。ポストには彼の前の住人というケイト(サンドラ・ブロック)から、自分宛の手紙が来たら新しい住所に転送してほしいと書かれた手紙が入っていた。それは、2006年から、2004年に暮らすアレックスに届いたものだった……。

 ひょんなことから手紙を交わすようになった二人。実は、2年の時を隔てた恋の始まりという、ファンタジーのようなお話を、大人の恋愛に仕立て、流れるように物語が進んでいくのであっという間にラストまで見切ってしまえるのですが、後半が思ったよりも盛り上がらないまま終わってしまいました。特に、最後の辺りは二人の時間が交錯してくるので混乱気味。あのときにアレックスがこうなったんだから、そのときケイトがこうなって…、え、ということは、これは今見ている場面より前に起こったことで……と、お話そっちのけで考えていたら、いつの間にかエンドクレジットが流れ始めていました。
 2年の時間の差が二人を隔てながら、同じ場所を訪ねたり、同じ本を読んだりしつつ共感し合ってゆく。それでも、二人が今の気持ちのまま直に会うことはできない。そのジレンマが気持ちを盛り上げてゆくわけで、切なさを生むのですが、画面だけを見ているとその圧倒的な時間差があまり感じられないんですね。

 ※以下、一部ネタバレ(反転させてお読みください)※
 中盤辺りで、2004年のケイトの誕生パーティーにアレックスが招かれる場面があります。もちろんこのときには、ケイトはまだアレックスのことを知らない。アレックスだけが、彼女と認識しているわけです。そこで二人は話をするうちに、意気投合し流れる音楽に合わせて踊り、キスをします。アレックスのもどかしい気持ちはあふれるほどに伝わって、ぐっと切ない気分になります。が、実際にふれあい、そこから二人の恋愛が始まってもまったく不思議じゃない雰囲気にまでなってしまうと、2年の時間差は存在感がなくなってしまい、普通の恋愛との境目が見えなくなってしまったような感じでした。
 韓国版では、この辺りはかたくなに守られています。主人公の二人が同じように過去の時点(男性が現に生きている時間)で会う場面でも、あくまでも一方的な形で、いきなりダンス→キスとはなりません。もう、もどかしいほどにプラトニック。
この辺りは、アメリカと韓国などアジアの違いなのでしょうが、設定を生かすには、韓国のほうがしっくりくるかな。

 邦題は『イルマーレ』ですが、原題は「湖の家」。さすがに、ストレート!リメイク元の韓国版では、この湖の家の名前こそが「イルマーレ」なのですが、ハリウッド版でのイルマーレは人気のイタリアンレストランの名前として登場します。
 韓国版ありきで見に行ったので、ついつい比較してしまいますが、元を見ていなければ、もっとすんなりアレックスとケイトの恋に浸ることができたのかな?
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2006年08月18日

『ポケット一杯の幸福』

『ポケット一杯の幸福』原題:Pocketful of Miracles(1961年・アメリカ)
 監督:フランク・キャプラ
 出演:グレン・フォード、ベティ・デイヴィス、ピーター・フォーク


 スペインに住む一人娘に仕送りを続けてきたアニー。娘には、高級ホテルに住み、裕福な生活をしていると言っているが、実は街角でリンゴを売り、物売り仲間から場所代を取って暮らしている貧しい老女だった。そんなとき、娘から婚約者とその父親を伴ってアメリカに会いに来るという手紙がくる。自分の嘘が知れ、大事な彼女の結婚がだめになってしまうことを恐れたアニーは思い悩む。そのアニーに助け船を出したのは、街の顔役。迷惑顔をしながらも、アニーを淑女にしたてあげようと奔走するが……

 BSで放送されたものを録画して見ました。フランク・キャプラ監督作品は大好きで、何年か前に立て続けに数本をビデオレンタルして見ました。1回ずつくらいしか見ていないので、物語の細かいところはすっかり忘れていますが、なによりも話の運び方がうまく、見終わったときに味わえる心温かな気分がすぐに頭に浮かんできます。
 今回も、そのイメージはちゃんと保たれました。

 娘のためとはいえ、本当の自分を隠したまま嘘をつきとおすというのはどうなのかな?と思いながらも、しがないリンゴ売りのために、大勢の仲間たちが骨を折り、ぶつかりあいながら、一所懸命になる姿に、いつの間にか応援したい気分になってしまうから不思議です。
 なんといっても、老女を演じるベティ・デイヴィスの貫禄が見事の一言に尽きます。ぼろの服をまとったときと、淑女になったときの落差はスッとするほどの変身ぶりで、どちらが本当の姿なのかとまどってしまうほど。大女優の演技というのは、何年たっても色あせず、力強いものなんですね。周りを固める俳優陣も、また味があり、ぜいたくに作られた感がいっぱいの作品といえるかもしれません。

 この作品、ジャッキー・チェンのお気に入りの一本で、後に『ミラクル/奇蹟』という作品でリメイクしていることを知りました。ジャッキー・チェンの『ミラクル/奇蹟』を見たときは、フランク・キャプラ監督のことも知らなかったので、改めて見比べてみたい気分です。
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2006年07月26日

『かもめ食堂』

『かもめ食堂』(2006年・日本)
  監督:荻上直子
  出演:小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ、マルック・ペルトラ


 フィンランド・ヘルシンキの街角に、「かもめ食堂」という名の日本食堂がある。店の主人は、日本人のサチエ。オープンして1ヵ月を過ぎたころ、少しずつ客が訪れるようになる。アニメ好きなフィンランド人の青年、ふらりとフィンランドにやってきたミドリ、行方不明になってしまったスーツケースを待つマサコ、なぜかいつも店の外からきつい視線を投げつける女性などなど…。

 かもめ食堂に集う人たちを、始めから終わりまでふんわりつ包み込むように描いた、心和む作品でした。
 「好きなことを、自分らしいやり方でやりたい」。それが、サチエという女性がフィンランドに日本の食堂を開こうとした動機だと話す場面があります。だれもが思うこと。でも、そうできないのが大変であり、不安でもあり。そこを超越してしまったかのようなサチエは、周りのペースに惑わされることなく、揺れることもなさげに超然とヘルシンキの街角に立っています。ほかに出てくる日本人のミドリとマサコも、これといった強い思いがあるわけでもなくフィンランドにたどりつきます。何泊何日で、あそこに行って、これを食べて、なにを見てという観光旅行につきものの忙(せわ)しさとはまったく無縁で、時間の制限も、お金の心配もなさそうに過ごしていきます。それは、憧れというよりも、異次元との隙間でもあるような不思議な空間を見ているような気分でした。

 日本で仕事してないの?」とか、「お金は大丈夫?」だの「ビザの期限はないんだろうか?」なんてことを次々と考えてしまう私は、つくづく下世話なんだなと思い知らされつつも、この穏やかな時間の流れに仲間入りしてみたいと憧れたり。

 群ようこの原作を読んでみたくなりました。
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2006年06月13日

『嫌われ松子の一生』

嫌われ松子の一生(2006年・日本)
 監督:中島哲也
 出演:中谷美紀、瑛太、伊勢谷友介、市川実日子、香川照之


 夢に破れ怠惰な生活をしている笙(瑛太)のもとに、九州の父(香川照之)が突然尋ねてきた。亡くなった笙の伯母・松子(中谷美紀)のアパートを、自分に代わって片づけてほしいと。何十年も前に家を出た松子伯母の存在すら知らなかった笙。アパートを訪ねてみると、部屋はゴミの山、隣人たちと会っても挨拶もせず、鼻つまみ者だったらしい松子。アパートを訪ねるうちに、笙は少しずつ松子の過去を知ってゆくのだった。

 ファンタジックな色彩と、画面にあふれるお花たち、そしてたびたび登場する愛らしい歌。てっきり、コメディだとばかり思っていました。いや、楽しい場面もいっぱりあるし、笑いどころもいっぱいですが、それよりなにより序盤から後半まで気づいたら、ほぼずっと泣きっぱなし。映画館なので、かなり堪えましたがこれが家でDVDででも見ていたら、もうたぶんどうしようもないくらいボロボロに泣いていたと思います。
 松子の生き方は、切なくて、哀しくて、寂しくて。ボロボロになりながら打ちひしがれて力尽き、倒れ、去っていこうとする人に追いすがるように迫ってきます。それなのに、彼女はまたそこから起き上がって、立ち上がってまた歩き始めるのです。
 なるべくなら傷つきたくないし、かっこわるい失敗もしたくない。でも、負け試合と分かっていながら、そこに突っ込んでいくことを辞さない松子の姿に、たじろぎながらも、うらやましさを覚えました。

 ボロボロ泣いたのに、見終わって時間がたてばたつほど、どこかから元気がわいて、妙にすがすがしい気分になってゆきます。もう1回見たい。

 おまけ:ゴージャス風ヒモ男の武田真治と行く先が雄琴というベタな設定に笑いました。そして、谷原章介!ファンには失礼ながら、彼の雰囲気を形にしたらこれしかないというほど絶妙。ほか、キャスティングが大変豪華なのは、やはり見ていて楽しいですね。
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2006年05月29日

『チルソクの夏』

『チルソクの夏』[録画](2003年・日本)
 監督:佐々部清
 出演:水谷妃里、上野樹里、桂亜沙美、三村恭代、淳評


 1970年代後半、韓国・釜山と、山口県下関。姉妹都市の両市が合同で開く陸上競技大会で出会った少年と少女の淡い恋物語を描く一本です。

 劇中で声高に日韓の歴史や、意識の違いが描かれてはいませんが、さりげない場面場面から当時の世情をうかがい知るよう作られています。韓国では戒厳令が敷かれ、高校生の日常に兵役や、38度線の話題がのぼることに下関の少女は驚きます。そして、下関に来た釜山選手団歓迎パーティー、主人公たち仲良し4人組がピンクレディーの「カルメン'77」を振り付きで踊ると、韓国の生徒たちは驚いたようにその光景を眺めるのです。
 外見はさほど違わず、年も同じ。陸上という競技に打ち込むことも同じなのに、住んでいる環境は大きく違う。そういう時代が確かにあったんですね。

 そして、なにより魅力的なのが陸上部仲良し4人組の友情。いっしょに泣いたり、笑ったり、悩んだり。4人が涙する場面では、思わずつられて涙が…。ラストがちょっとサービス過剰で総合点は今ひとつですが、グランドを4人が走り抜ける姿は爽快そのもの。気持ちのいい青春映画に仕上がっています。

 余談:陸上部の先輩役で、福士誠治さんが出演してますね。『純情きらり』の音楽青年とはうってかわって、坊主頭のスポーツ少年。今も若いけど、そのまんま高校生って感じで、もっと若かった!存在感というほどの役どころではないのですが、なかなかいいヤツでした。そういえば、『スウィングガールズ』も坊主頭の野球部員だったけど、達彦の“坊ちゃん”らしい髪型のほうが好きですなぁ。
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2006年05月17日

893(ヤクザ)タクシー

『893(ヤクザ)タクシー』[録画](1994年・日本)
 監督:黒沢清
 出演:豊原功補、森崎めぐみ、大森嘉之、上田耕一、寺島進

 組員たちが親分の命令でつぶれかけたタクシー会社にのりこみ、運転手となって会社を盛り返そうという、なかなか奇天烈な設定ながら、物語は至極まっとう。監督が黒沢清なので、どこかでずんと落とされるかと思っていましたが、気持ちよく話は進んでいきます。
 不必要なドンパチもなく、血みどろもなく、安心して見られる、ちょっと元気になれる極道物でした。

 寺島進が、豊原功補の弟分役で出ていますが、10年以上前の作品だけあって若い!近ごろの一癖もふた癖もある存在感とはまた違う初々しさです。10年って、やはり長い時間なんですね。
 そしてもう一つ、助監督のところに青山真治の名前があるのにびっくり。
 劇場公開作ではなく、オリジナルビデオ作品のようですが、今にしてみると豪華な顔ぶれです。
 こんなライト・コメディタッチの作品がたくさん作られた、80年後半から90年初めにかけての邦画はやはりいいですね。
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2006年05月13日

DVD『帰郷・特別篇』

『帰郷・特別篇』[DVD](2005年・日本)
 監督:萩生田宏治
 出演:西島秀俊、片岡礼子、守山玲愛、光石研、相築あきこ


 母親の再婚披露宴に出席するため帰省した晴男は、昔好きだった深雪と再会する。深雪が離婚して娘といっしょに暮らしているアパートを訪ねると、深雪は行き先も言わず出かけたままで、娘のチハルが留守番をしている。深雪の「(チハルの)目もとなんか晴男くんにそっくりよ」の言葉が気になる晴男は、チハルと二人、深雪を探しに出かける…

 冒頭、仕事から戻ったらしい晴男が、怪訝そうな顔をしながらはがきを手に取る。カメラがはがきに寄り、文面をたどっていくとそこには結婚案内の文字、そして差出人の名前が画面に大写しになる…「母より」と。
 ふっと笑えてしまういい空気が、そのまま最後まで続いてくれる作品です。帰省してみると、みんな変わらないようで、着実に昔と違う生活を歩き出している中、主人公の晴男だけはそのまま。そこに突然現れた自分の娘かもしれない女の子。なにか変わるかもしれない、ほんの少しだけ気分が華やぐような、そんな雰囲気がじんわりと効いてくるのです。

 先日のオールナイトで見て以来気になって、ついにDVDまで買ってしまいましたが、特典映像にある初日舞台挨拶はなんと、西島秀俊、光石研、利重剛そろい踏みなんです!光石研さんのファン歴は長いほうだと思いますが、よくよく考えてみると役でない素の光石さんの映像を見るのはこれが初めてかも。DVD買ってよかったと、つくづく思いました。あ〜、幸せ。
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2006年05月10日

『ニンゲン合格』

『ニンゲン合格』(1999年・日本)
  監督:黒沢清
  出演:西島秀俊、役所広司、大杉蓮、麻生久美子


 公開当時からずっと見たいと思いながら機会に恵まれなかっただけに、やっと巡り会えたような感覚で終始見ていました。

 交通事故で昏睡状態に陥っていた14歳の豊が、10年の時を経て目覚めます。その間にソ連邦は崩壊し、火星人がいないことが確認されたことを雑誌の中で知るのですが、そのことを彼に告げるのは、父や母ではなく、妹でもない、藤森という中年男性でした……

 誰も補ってくれない、空白の時間。豊少年は、自分の力でそれらを少しずつ埋めようとするかのように、孤軍奮闘します。そこには、24歳でありながら心は14歳のままでいる少年の、固い決意が画面にあふれているようで、後半にいくにつれてわけもなく切なくなりました。最後、思いがけない形で物語は幕を閉じますが、豊にはそれが始めからそれを予感していたのかもしれれない…そう思いました。
 ニンゲンであろうと、生きようとする少年と、彼にたぐり寄せられるように集まった人たちの“一筋縄ではいかないニンゲン賛歌”でした。
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2006年05月03日

『2/デュオ』

『2/デュオ』(1997年・日本)
  監督:諏訪敦彦
  出演:柳愛里、西島秀俊


 詳しい脚本がなく半分ドキュメンタリーのようにして撮ったといわれる作品だけに、ストーリーらしき物語がない型の作品だとしたら、ちょっと苦手だなと心配していたのですが、その点は大丈夫でした。
 が、役者志望の青年と、同棲しながら彼を支える女性が繰り広げる日常を見続けるのは、辛かった。行き詰まった現状にあがきながら、行き場のない感情を彼女にぶつける青年。それを理解しようと、支えようと必死になる女性。二人の気持ちが分からないわけではないんですが、これが自分の日常になってしまったらと想像したがために、息苦しくてしんどくなってきました。私が主演したら、どわーっとちゃぶ台(←劇中にはありません、念のため)ひっくり返して、「ええかげんにせーよー!」と一喝し、映画は15分で終わるでしょうね……。
 とはいえ、後半にお話が進むと少し一息つけるので、前半のしんどさは半減して、ややすっきりした気分で見終えることができました。

 オールナイトの1本目でこの作品は、正直辛かったです……。これが3本目や4本目であれば、十中八九睡眠タイムになったでしょうね。
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2006年04月30日

西島秀俊ナイトin横川シネマ

【オール西島秀俊ナイト】
 『2/デュオ』(1997年・日本)
  監督:諏訪敦彦
  出演:柳愛里
 『ニンゲン合格』(1999年・日本)
  監督:黒沢清
  出演:西島秀俊、役所広司、大杉蓮、麻生久美子
 『カナリア』(2004年・日本)
  監督:塩田明彦
  出演:石田法嗣、谷村美月、西島秀俊
 『帰郷』(2005年・日本)
  監督:萩生田宏治
  出演:西島秀俊、片岡礼子


 広島にある横川シネマで、こんなオールナイトが開かれました。インディペンデント作品を中心に上映している劇場ということもあり、ふだんはさほどお客さんが多いわけではないのですが、昨日は違いました。西島秀俊さんご本人をゲストに迎えたトークショーもあり、地元の人以外にも、東京や大阪、果てはソウルからいらした方まであったほどの盛況ぶりでした。これまで何度か足を運んだことはありますが、100席くらい(たぶん…)とはいえ客席がいっぱいになったの風景を初めて見ました!
 西島秀俊さん、すてきでした〜♪なんといっても、顔が小さい!いや、そんなことはどうでもよく……ちらっとながら、黒沢清監督の『CURE』、青山真治監督の『Helpless』の名前が出たり、横川シネマのサイトを見たことがあったとか、ご自身も映画を見るのが本当にお好きだという雰囲気が伝わってくる話しぶり。横川シネマの溝口さん(支配人さん?)の独特な話術にのせられて、ご自身でも「こんな、喫茶店で普通に話すような話でいいんですかね?」なんていいながら、淡々と話をする西島さんは、映画が大好きな人が、そのまま俳優というスタッフとして映画作りの一端にとけ込んだような、そんな方に見えました。

 5年ぶり、いやもっとかな、久々のオールナイトはさすがにこたえましたが、忙しさにかまけて、去年は片手で十分足りる数しか映画館に行かなかった自分は、やっぱりもったいないものをいっぱい逃してきたのかななんて思わせてもらえました。

 やはり映画館は最高です!

 こちらが横川シネマのサイトです→→→■■■
 
posted by あんく at 13:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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