2007年07月16日

『香港の甘い豆腐』

香港の甘い豆腐
香港の甘い豆腐
posted with amazlet on 07.07.16
大島 真寿美
理論社 (2004/10)
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 母と二人暮らしの彩美。高校を留年しそうになったとき、母が起こした行動は思いがけないものだった。亡くなったと聞かされていた父親に会うために、夏休み、めったなことでは仕事を休んでくれない母が、香港へ行くと言い出した。父親が生きている、しかも香港で。香港の街に立ち、歩き、食べ、彩美の足が地に着いていく時間を追体験するようなお話。

 タイトルは前から見知っていたし、手にも何度もとってみたのですが、そこに“香港”という言葉が含まれているというだけで敬遠してきました。思い入れ強い場所がどんなふうに描かれているのか、つい身構えてしまうんですね。自分のイメージとずれていたりすると、気になって物語に身が入らないし……なんて考える必要もなかった。

 しばらく香港にホームステイすると、日本で待つ祖母に伝える彩美が使った言葉は「元気の渦」でした。そう、香港にはなんだか分からないけれど、とてつもなくエネルギッシュな力があった。うん、確かに「元気の渦」なのです。
 香港の街に初めて立つ、主人公の彩美。彼女が行く観光スポットは、ビクトリアピークとスターフェリーくらい。あとは、街中にあるジューススタンドで搾りたて生果汁を飲んで、雲呑麺を食べて、片言の広東語を覚えて。それだけなのに、どこからか力が湧いてくる。読んでいると、自分も香港をふらふらと歩いているような気になってきます。

 初めての香港。母親や、祖父母、学校という日常から抜け出せたとき、初めて周りの風景が色を持っていく。自分が知りたいこと、聞きたいこと、伝えたいことが見えてくる。忙しい香港の街は、親切に先回りして行き先を教えてくれたりはしない。自分のことは自分で。なにもない個人が、裸一貫で自分を形作っていく場所。
 主人公が少しずつ変わっていったように、読み終わったらちょっと元気が出てきたような気分になります。

 読み終わってから眠りについたせいか、この夜は香港でコンサートに行っている夢を見ました。なんだか無性に楽しい夢で、目が覚めてからもいい気分がしばらく続いたけれど、これも「元気の渦」のおかげ?
タグ:読書
posted by あんく at 13:54| Comment(0) | TrackBack(1) | 著者別 あ〜か | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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「香港の甘い豆腐」大島真寿美
Excerpt: ひとりが気持ちよかった。やっと、ひとりになれた。親や友だちから解き放たれた地。風はぶっきらぼうだけど、いじわるじゃない。出生の秘密が、私を香港へと運んだ。孤独を初めて抱きしめた十七歳のたおやかで.....
Weblog: 粋な提案
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