2008年02月07日

『無双十文字槍 鬼坊主末法帖』

無双十文字槍―鬼坊主末法帖
犬飼 六岐
徳間書店 (2007/08)
売り上げランキング: 202599

 いや、もう文句なしにおもしろいです!!

 背丈は六尺を越える大男。両脇に一人ずつ、計二人の大人を抱えて山道を駆け続けるほどの剛力の持ち主で、宝蔵院流十文字槍の使い手。俗なことも大好きだが、権力に媚びることもなく、己の道をつきすすむ、不覚という僧侶が主人公です。
 これ以上ないほどの破れ寺に住みついた僧侶の不覚は、特定の檀家を持たず、寺に出入りする瓦版売りの佐七が持ち込んでくる頼まれごとを引き受けたり、事情のある亡骸を弔ったりしながら暮らしています。
 この破天荒な僧侶・不覚がまず魅力的。
 ものすごーく大きな鼻○そ(←別にいいけれど、文字にするのがためらわれたので、伏せ字です…)が取れて、それをどうしようか真剣に悩んだかと思うと、損を承知で筋を通したり。読めば読むだけ、不覚のおもしろさに取り込まれてゆきます。

 10の短編からなる連作集ですが、十人十色ならぬ、十話十色とでもいいたくなるほど多彩で、どれもこれもがおもしろい。物語の起こりも、展開のしかたも、出てくる人たちも、どれ一つとして既視感を感じさせないつくりは、お見事の一言。
 時代小説にも、まだまだ新しいものがでてくる余地があると思うと、わくわくしてきます。

 ペンネームの由来についてふれたインタビュー記事を、ネットで見ました。ロッキーという名前の犬を飼っているので、「犬飼六岐(いぬかいろっき)」だとか……まさか、こういう意味とは思ってもみませんでした。さすが、破天荒で一筋縄ではいかない人物を、こんなに活き活きと描く作家さんだけあります。

ラベル:犬飼六岐 読書
posted by あんく at 23:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 著者別 あ〜か | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月02日

1月の本読み(08年)

トーキョー・プリズン 筋違い半介 千年の祈り (Shinchosha CREST BOOKS) 漢方小説 (集英社文庫 な 45-1) (集英社文庫 な 45-1)シー・ラブズ・ユー―東京バンドワゴン にっぽん虫の眼紀行―中国人青年が見た「日本の心」 (文春文庫) シャッター切ってアジアを食す 吉岡清三郎貸腕帳 少女七竈と七人の可愛そうな大人 終わらぬ「民族浄化」セルビア・モンテネグロ (集英社新書)天平冥所図会

『トーキョー・プリズン』 柳広司
 戦時における罪や、人間というものが容易に残酷になれること、そして過ぎ去ったことに目を向けずに生きてゆけるものであるという不条理が、柳広司らしいそこはかとないユーモアで描かれる。ふと、自分はどうだろうと考えてしまう。

『筋違い半介』 犬飼六岐
 とにかく、出てくる人が多彩で、個性的でおもしろい!そのちょっと風変わりな人々が、物語の中でさらに思わぬ動きをしてくれる。いったい、どこでこんな人物造形を思いつくのだろう?おもしろい時代小説作家さんは、まだまだいるんだと思うと幸せな気分になる。

『千年の祈り』 シーユン・リー 篠森ゆりこ(訳)
 翻訳のよさもあるのだろうが、シンプルな文章は、言葉そのものの美しさを思い出させてくれる。日本語で読んでいながらも、中国の日常風景がキャンドルを灯すようにじんわりと浮かび上がってくる。ありきたりでないのに、普遍的な不思議な短篇集。

『漢方小説』 中島たい子
 体調を崩した主人公が、東洋医学に出会って少しずつ回復してゆくのを見ていると、漢方薬や中医に興味がわいてくる。なにか、飲み始めようかと真剣に考えてしまう。

『シー・ラブズ・ユー』 小路幸也
 『東京バンドワゴン』の続編。新しい人物も登場して、まだまだ続きそうな感じ。

『にっぽん虫の眼紀行』 毛丹青
 中国人でありながら、著者の書く日本語はそれをまったく感じさせないほどに流麗で美しいのに驚く。特に、自然風景の描写は読んでいてため息が出るほど。

『シャッターを切ってアジアを食す』 三留理男
 アジアの食は、多種多彩で、写真になるとほんとうに絵になる。市場に積み上げられた魚や野菜や果物の独特の色合いは、においたちそうなほど存在感あり。タイ料理がむしょうに食べたくなる。

『吉岡清三郎貸腕帳』 犬飼六岐
 またしても設定でぐいと引き込まれた。“貸し腕屋”という聞き慣れない商売を生業とするのは吉岡清三郎という、もとは商家出の男。悪人面で、容赦なし。冴えわたる腕でいともあっさり相手を斃すかと思えば、貸し腕代の利息を几帳面に帳簿付けしたりして、どことなく愛嬌がある。そして、借金のかたに下女として迎えた、おさえという女。あくまでも清三郎の目を通しての印象だけがつづられているのだが、その評価たるや、もう笑ってしまうほど。「冷気を感じさせるほど暗い」とか言って、その姿を見ては、どんよりしている清三郎の姿がおかしくて、おかしくて。陰気な様子をかいて、こんなにおかしいなんて、それこそおかしい。
 江戸情緒や、市井の人々の人情や、剣戟の痛快さのどれとも違う、一風変わったおもしろみが癖になりそう!最近の、いちばんのお気に入り!!

『少女七竈と七人の可愛そうな大人』 桜庭一樹
 古風な言い回しや、会話が小さい北の町の閉塞感によく合っている。何度も出てくる“かんばせ”という言葉がなぜか印象的。

『終わらぬ「民族浄化」 セルビア・モンテネグロ』 木村元彦
 ボスニア紛争では、ボスニア対セルビアという対立が主で分かりやすかったけれど、旧ユーゴ全体となると、どの地域でなにとなにが争っているのか、どちらが攻勢なのか、孤立しているのか、あまりに入り乱れて混乱しきり。これほどまでに、民族が分離し、衝突を繰り返してきたのだと思うと、やりきれない思いに押しつぶされそうな気がした。

『天平冥所図会』 山之口洋
 平安時代が舞台で、成仏できない幽霊や、地元の神様なども登場するファンタジー。かつて、人と霊や神の境目が今よりずっとゆるやかだった時代への、憧れのようなものがかいま見える。実在の人物たちのとらえ方も、おもしろくて、歴史に疎い私でも楽しめた。
ラベル:読書
posted by あんく at 21:22| Comment(0) | TrackBack(0) | ○月の本読み | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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