2007年06月30日

6月の本読み

オンライン書店ビーケーワン:眠れぬ真珠 オンライン書店ビーケーワン:安徳天皇漂海記 オンライン書店ビーケーワン:誤読日記 オンライン書店ビーケーワン:愛すべき娘たち オンライン書店ビーケーワン:イニシエーション・ラブ オンライン書店ビーケーワン:空を飛ぶ恋 オンライン書店ビーケーワン:ベジタブルハイツ物語 オンライン書店ビーケーワン:モンゴルのおすそわけ オンライン書店ビーケーワン:蒲公英草紙 オンライン書店ビーケーワン:読者は踊る

『眠れぬ真珠』大人の恋愛。決して難解でも、エキセントリックでもなく、年齢の差があっても覗き見的ないやらしさもなく、楽しんで読める。男性作家の手による作品ということを、読んでいると忘れてしまう。
『安徳天皇漂海記』歴史に詳しい人にとっては、壮大でロマンあふれる面白いお話なんだろうことは分かるだけに、自分の歴史音痴がつくづく恨めしい。

『誤読日記』ありとあらゆる出版物を俎上に乗せながら、どれもしっかり語られていることに、ただひたすら驚く。
『愛すべき娘たち』BLではなく、女性を描いても、よしながふみは読ませるなぁと分かって、妙に嬉しくなった。

『イニシエーション・ラブ』表紙に「ミスエテリー・リーグ」とあるのに、読んでも、読んでも謎めいたところが出てこず、じりじり。最後の最後で、あっというどんでん返し…なんだろうけど、待ちくたびれて衝撃的な驚きとはいかず。86〜87年が舞台なので、テレホンカードなんかも出てきたのが、非常に懐かしかったです。
『空を飛ぶ恋』ケータイが登場する、短いお話。5分くらいずつ読んでいくのに、ちょうどいい長さ。

『ベジタブルハイツ物語』楽しく読みました。アパートの部屋に、アボカドとか、にんじんとか野菜の名前がついているのが、楽しかったです。以上!
『そろそろ旅へ モンゴルのおすそわけ』岸本葉子=旅もの、というイメージがあったけれど、癌を患われてから旅行は控えられていたというくだりでは、少なからずショックを受けました。それでも、軽快な語り口は健在で、一安心。写真も満載で、旅心が刺激されることうけあい。

『蒲公英草紙』目に見えぬものと、その世界に出会うお話に、現実と空想の間を浮遊するような感覚を呼び起こされたような気分。ただ、最後がどうにもしっくりこない。
『読者は踊る』ときどき、その辛口さ加減に食傷気味になるけれど、それでもやめられない。不思議です。

オンライン書店ビーケーワン:獣の奏者 1 オンライン書店ビーケーワン:獣の奏者 2

『獣の奏者(上・下)』
 “闘蛇”という動物が登場するファンタジー世界。読み始めると、一気にその世界が目の前に浮かんで、架空の動物たちや、それらが住まう洞窟、そこにいたる山道までが、現にそこに存在しているような気すらして、あっという間にお話の中に引き込まれていきます。

 エリンという主人公の少女。彼女の母は異民族でありながら、闘蛇という国にとって貴重な生き物の獣医師の職についていた。幼いころから、生き物にふれるのが当たり前の中で育った少女が、辛い母との別れを体験し、新しい道を歩いてゆく過程を描く物語。

 ファンタジーでありながら、少女も周りの人々も特別な能力を備えているのではなく、己の道に向かって突き進んでいくことで、可能性を大きく開かせてゆくその過程は、知りたい、分かりたい、理解したいという思いが、なにかを成し遂げてゆくことの喜びを思い出させてくれます。そういえば、子どものころには、読めない文字が分かるようになったり、テレビの言葉の意味が分かったり、そんなことが楽しかったような気がします。
 少女エリンが、ただひたすらに道をきわめようとする姿は、眩しくもあり、感動的でもあり。

 大人には、かつての感動を呼び起こすきっかけになるでしょうし、子どもたちが読めば、将来や、自分の可能性といったことに思いを馳せることができるかもしれません。
 でも、けっしてお説教くさいところはないので、物語世界にどっぷり浸って、思い切り楽しんでほしいお話です。
posted by あんく at 22:28| Comment(0) | TrackBack(0) | ○月の本読み | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月23日

映画『キサラギ』

『キサラギ』2007年・日本
 監督:佐藤祐市
 出演:小栗旬、ユースケ・サンタマリア、
    小出恵介、塚地武雄、香川照之


 冬のある日、人気のないビルの屋上に姿を見せた5人。ファンサイトの掲示板で知り合った彼らは、自殺した清純派アイドル、如月ミキの一周忌をともに過ごすために集まった。
 和気あいあいと思い出を語り合おうと始まった会は、果たしてどうなるのか。
 5人の濃い面々がくりひろげる、密室劇。

 いわゆる、密室ミステリーの類なのでしょうが、謎解きとしては決して巧い出来ではありません。もし、純然たるミステリーとしてこれを小説なりで読んだら、肩すかしをくったように思うかもしれません。
 でも、だからこそ観客が少し考えると次の一手の答えが分かるようにできている。次はこうくるぞ、くるぞ、と思っているところに、ズバッと直球ストライクが投げ込まれるような心地よさ。やっぱりこうきたか!とにんまりすると、さらに次の仕掛けが。劇中の会話や、言葉、小道具にちゃんとヒントが仕込まれていることに気づくと、次はこれかな、あれかなとどんどん楽しさが加速していきます。
 超人的な能力をもった名探偵が、一気に謎解きをしてくれる気持ちよさとはまた別の、ちょっとした爽快感です。

 そして、この集まりの結末を見届けた後、爽快感とはまた別のふっとした和らいだ余韻が漂います。
 時間が流れることも、なにかとかかわることも、偶然ではなくすべて必然なのかもしれない。

 ちょっとまた元気にやってみようか…そう、思いたくなる一本です。


 密室劇で、謎解き。お話を追いながら『12人の優しい日本人』がたびたび思い浮かびました。脚本は映画化を見こして舞台用に書かれたものだった、という説明が公式サイトにあって、なんだか納得。


posted by あんく at 22:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月11日

『物は言いよう』

物は言いよう
物は言いよう
posted with 簡単リンクくん at 2007. 6.11
斎藤 美奈子著
平凡社 (2004.11)
通常2-3日以内に発送します。


 FC(フェミ・コード)なる、その言動がセクハラや性差別にならないかどうかの基準を用いながら、政治家や著名人の発言、失言、迷言などなどをえぐる一冊。

 そこまで考えなくても……、と思うところがないわけではないし、己の言動を振り返ってひやりとするところもあるけれど、読み終われば溜飲が下がります。「よくぞここまで言ってくれた!」感たっぷり。

 最後のほうにあるジェンダーフリーの考え方を、色鉛筆にたとえて説明する部分は、とくに秀逸。感激的ですらあります。
 とかく、「女のくせに」とか「男なら」なんて言いがちですが、性別に関係なく、いろんな性格の人がいて、考え方があって、当たり前と思えるようになるには、こうして自分の中にあるものを改めてじっくり見つめてみてはどうだと、語りかけられている、いや横っ面を張られたくらいの衝撃は感じられます。

 しかし、著者の語り口があまりにも快活、爽快なので、すっかり自分も分かったような気分になって、そこで思考が止まってしまうような気も。いろいろな意味で、危険な一冊かもしれません。

 そういえば以前、結婚した友だちが「なんで、夫のことを“主人”なんて呼ばなくちゃいけないの?私は家来じゃないのよ」と鼻息を荒くしていたのを聞いて、そうか、そういうふうに考える人もいるんだと思ったことを思い出しました。
 それ以来、“ご主人”という言葉を使うたびに違和感を覚えつつも、他の人の“夫”をうまく言い表せることばが見つからず、いまだ使い続けています。本書では“ご夫君”と言い換えてはとありますが、さすがにこれは耳慣れないしな……。

 この本が出てから数年たっていますが、未だに公人たる政治家の失言が繰り返されてますね。
 選挙で当選したあかつきには、ぜひこの本を当選祝いとして各政党なり、衆議院、参議院各議会なりで、最低限のマナー本として配布してくれないものでしょうか。それでも理解が難しい方には、ぜひとも、よしながふみの『大奥』をセットにして、もしも性別が逆転したらをもう少しリアルに感じ取っていただけるよう配慮してはどうでしょう?
posted by あんく at 21:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 著者別 さ〜た | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月06日

『十面埋伏』

十面埋伏 上
十面埋伏 上
posted with 簡単リンクくん at 2007. 6. 6
張 平著 / 荒岡 啓子訳
新風舎 (2005.11)
通常2-3日以内に発送します。
 
十面埋伏 下
十面埋伏 下
posted with 簡単リンクくん at 2007. 6. 6
張 平著 / 荒岡 啓子訳
新風舎 (2005.11)
通常2-3日以内に発送します。


 中国の地方にある刑務所。同房の受刑者に暴行をし重傷を負わせた王国炎を取り調べた捜査官・羅維民。王は興奮した口調で自分が過去の凶悪未解決事件に関係していたと言い始める。初めは半信半疑だった羅維民だが、次第にそれが事実であると確信してゆく。
 しかし、その受刑者はなぜか模範囚として異例の減刑まで受けている。なんの対策も講じられないことに不信感を抱いた羅維民は、かつて自分の同僚だった公安の警察官らに援助をもとめながら、真相に迫ってゆく。そして次第に、背景にある官僚や役人たちの汚職が明らかになり、羅維民たちの前に立ちはだかってゆく……。

 上下巻で800ページにも届きそうな長編。しかも、中身は中国の刑務所とそこに絡む汚職。ノンフィクションといっても通用しそうな骨太のテーマ、しかも苦手な翻訳物だけに書店で初めて見たときには「縁のない分野だな」と横目で見ただけでした。
 しかし、食わず嫌いはいけません。とっつき悪さは初めの数ページを読んだら、とっとと消え去ります。導入部分から、最後まで息つかせぬ展開の連続。果たしてどんなふうに結着がつくのか、どこにおさまるのか、読み始めたら止まらなくなりました。

 ニュースでもたびたび取り上げられる、中国の汚職問題。政財界に深く根をはる深刻な問題。さらには、急速な経済発展による富裕層と農村の広がる経済格差。果たして、羅維民たちはこの泥沼のような現実から抜け出せることができるのかと、読んでいるこちら側が気を揉む始末。絶望感すら覚えたのも、一度や二度ではありません。
 それでも、組織の中で知略をめぐらせ、厚い泥に足をとられながら進もうとする人々を、物語は丹念に描いてゆきます。

 悪いことも、いいことも、どちらにしても徹底的にやり尽くす。さらにそこに両方をあわせもつ灰色の人々をも内包して、すべてが歴然と、当たり前の顔をして共存しあう。みなが、ぶつかり合うことをいとわない、熱烈で、激しいものにあふれた、読み応え十分の作品でした。
 お互いを励ましながら、目的に向かってつきすすむ、真の公僕たちの活躍が胸に迫ってきます。

 タイトルの「十面埋伏」とは、周囲に隙なく伏兵が潜んでいることだそうです。
posted by あんく at 23:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 著者別 さ〜た | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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