2007年04月29日

映画『バベル』

『バベル』2006年・アメリカ
 監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
 出演:ブラッド・ピッド、ケイト・ブランシェット、アドリアナ・バザーラ、役所広司、菊地凛子


 モロッコに暮らす羊飼いの一家がコヨーテ退治用にライフルを手に入れるところからお話が始まる。アメリカ、メキシコ、日本、そしてモロッコの4つの家族の物語が、遠く離れながらも同じ時間と、少しの結びつきをもって描かれる。

 それぞれの家族のつながり方に、ちょっと無理があるかなという気がなきにしもあらず。作りすぎず、もっと些細な関わり方にしてもよかったのかなと思ったところもあります。なんだかひっかかる。
 が、それでもそれぞれのエピソードのつながり方や、場面場面が切り替わってゆく流れは自然で、すんなりと物語に誘い込まれて、143分という長尺ながら心地よい気分で見終っただけに、もうちょっとで好きになれそうで、なれない、もったいない作品という気分です。

 日本の部分は、演じている人が(おそらく)みな日本人で、風景も東京であるだけに、彼らの行動の微妙な違和感が気になってしかたありませんでした。特に、高校生の女の子にいきなりキスされたり、あからさまな行動に出られたりしたときに見せた男の人の反応が、あまりにシリアスすぎてびっくり。驚きつつも、笑ってごまかすあたりが、ありそうな反応じゃないかと思うのですが。
 外国の人から見た日本人像なのか、それとも監督自身が表現したかったお話を日本編にあてはめただけなのか。

 もうひとつ気になったのが、アメリカ人夫妻と、彼らと同じツアーの参加者たち。不測の事態で混乱しているのは分かるとしても、モロッコの片田舎で見せた不遜にすら見える態度。一方的な要求のしかた。もしかしてこれは、アメリカを嫌いになるための映画なんじゃないかと思ったほどです。アメリカ人夫妻をつなぎとしてさらりと描くだけでよかったようにも思うし、せっかくブラッド・ピッドとケイト・ブランシェットというスター二人ならもっと違う役割があってもよかったはず。

 菊地凛子の存在感も印象的でしたが、いちばん目をひいたのは、暖かな眼差しと、穏やかな佇まいをみせるメキシコ人のベビーシッターを演じたアドリアナ・バザーラ。もう一度見るなら、メキシコ編部分だけをつなげて見てみたい気分です。

 
 それにしても、東京の夜景には圧倒されました。地方に住む身には、あれが同じ国の風景とはとても信じられません……
posted by あんく at 14:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月14日

『ザ ジャパニーズ コミックペーパー』

ザジャパニーズコミックペーパー
吉橋 通夫作 / 高田 雄太絵
新日本出版社 (1995.2)
通常2-3日以内に発送します。


 明治のころ、まだ国会もなく、選挙もない時代。祇園の舞妓である小雪は、七条ステーションに向かう途中で天狗と名乗る男に助けられる。我楽多珍報(がらくたちんほう)という風刺新聞を発行している天狗が、行方知れずの兄と知り合いであると知った小雪は、この風変わりな男とかかわり始める。自由民権運動、女の生き方、そして一人の少女の成長の物語。

 ジュニア向け作品ではありますが、時代小説として楽しむのになんら支障はありません。切った張ったの大立ち回りはないものの、市井物が好きなので、夢中になって読み切りました。
 文字が大きく、難しい漢字があってもルビがふってあり、途中には風情ある挿し絵もあって、むしろ短編としてじっくり読むにはこういうのがいいんじゃないかと思うほどです。

 落ちぶれた士族出身で、両親もすでになく、兄は行方が知れず、あと数年すれば水揚げして芸妓にならなければならない。そんな現状にあって、人と出会い自分の行く先を見つめてゆく小雪の姿は、清々しいの言葉につきます。
 小雪と同年代の人が読むときには、自分の将来や今の姿を、その時代をすでに過ぎた者にはかつての自分や、そこにある感懐を、それぞれ重ね合わせて見るのだろうと思います。

 すべての人に明るい未来が開けているなんてことはないし、10代のころに思い描いていたのとはまったく違う面が、時間の中に見えてきた年齢になってはいますが、ここにある物語が絵空事のきれい事なんてものには見えない。むしろ、そういう時間があったことが誇らしく思えるようないいお話でした。

 著者の吉橋通夫、作者プロフィールを見ると、岡山県出身のようです。この本を知ったきっかけの金原瑞人、最近話題の『バッテリー』のあさのあつこ、重松清、岩井志麻子、岡山の方ががんばってらっしゃるように思うのは、お隣だからよけいにそう思うんでしょうか?

 
posted by あんく at 23:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 著者別 ま〜わ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月11日

『彼女のこんだて帖』

彼女のこんだて帖
角田 光代著 / ベターホーム協会編集・料理
ベターホーム出版局 (2006.9)
通常24時間以内に発送します。


 角田光代はとっても好きな作家さんです。にもかかわらず、いつも申し訳ない気持ちでいます。というのも、彼女の小説よりもエッセイのほうがずっと、ずっと好きだからです。小説を書く人にとっては、とっても失礼なんじゃないかといつも思っているわけです。

 しかし、今回ばかりはそんな後ろめたさも感じませんでした。料理にまつわる短編15作。1つ目のお話に登場した人が、2つ目でメインになり、またそこに現れた人についてのお話が3つ目で語られる。食べ物や、料理を作ることでつながってゆくお話が多彩で、どんどん次が読みたくなって、一気に読み終えてしまったくらいですから。

 角田光代という作家さんは、ほんとうに食べることが好きなんでしょうね。食べる場面にしろ、料理を作る場面にしろ、どちらもがいつも丁寧に描いてあります。おまけに、どんな気分であっても、食べることが苦痛として登場しないし、おざなりにされていない。食べると元気が出てくる、作るとなにかを忘れて気持ちが晴れてゆく、そんなふうな描かれ方が多くてほっとします。
 読むと、お話に登場するものを食べたくなる以上に、なにか無性に料理をしたくなってくるんです。この本は、そんな欲求をしっかり満たすべく、レシピまで丁寧に紹介されているという優れもの。

 料理本としても、本棚に一冊おいておきたくなりました。
posted by あんく at 22:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 著者別 あ〜か | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月10日

断腸の思い

 最近、自転車とドライヤーを買いました。
 どちらも、何度も買い換えようかなと思案して、実際にお店に行って眺めては帰ってくることの繰り返しで、最近まできてました。

 自転車のタイヤがもうだめになって、交換すると5000円近くかかると言われ、それこそ断腸の思いで処分することにしました。ブレーキの効きは悪いし、スタンドもすぐにゆるんで倒れそうになるし、がしがしペダルを踏むとチェーンが外れるしで、オンボロもいいところなんですが、まだ使えると思うと捨てるのもしのびなくてね。
 あんまりにもボロっちいおかげで、ここ6年ほどは駐輪場だろうが、自宅だろうが、スーパーだろうがどこでも施錠せず(←防犯上、ほんとうはいけないんですけどね……)にほっておいても、一度も盗まれることがなく、楽で重宝してました。
 ちなみに、途中で使ってない時期はあったものの、15年物でした。

 もっというなら、ドライヤーは平成元年から使っているもの。こちらは壊れたわけじゃないんですが、電気店のポイントがたまったので思い切って新調。
 今までのものと較べて、音は嘘のように静かなのに、パワーは格段にアップ。あっという間に髪が乾かせて、19年はやっぱり長いなと実感。また、20年くらい大事に使いたいと思います(?)
posted by あんく at 22:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月05日

3月の本読み

オンライン書店ビーケーワン:どろろ 1 オンライン書店ビーケーワン:シーセッド・ヒーセッド オンライン書店ビーケーワン:ドスコイ警備保障 オンライン書店ビーケーワン:にわか大根 オンライン書店ビーケーワン:セネシオ オンライン書店ビーケーワン:若かった日々 オンライン書店ビーケーワン:陽気なギャングが地球を回す オンライン書店ビーケーワン:二人道成寺 オンライン書店ビーケーワン:人のセックスを笑うな オンライン書店ビーケーワン:ウルティマ、ぼくに大地の教えを オンライン書店ビーケーワン:黄泉路の犬 オンライン書店ビーケーワン:愚者のエンドロール オンライン書店ビーケーワン:卒業

『どろろ』面白いな〜。前半の丁寧さに較べて、後半はかなり急ぎ足だったのは、連載の都合かなにかなんだろうか?
『シーセッド・ヒーセッド』シリーズものの第3作目と知らずに読んでも、十分楽しめた。主人公の暖かさがにじみでて、いい気分。
『ドスコイ警備保障』作り込まれた重厚さのようなものはないけれど、出てくる人がみんなおかしくて、いい人で、ほっとする。
『にわか大根』またしても、シリーズものの3作目から読んでしまったのに、やっぱり面白い。
『セネシオ』森福作品としては、ちょっと物足りない。主人公の意図するところが、最後まで分からなくて……
『若かった日々』ある女性の来し方をつづった連作短編。時間を短い断片できりとっているので、途中で果たしてこれがつながったお話なのか、独立した短編なのか分からなくなる。でも、その不思議な感覚がいやではない。
『陽気なギャングが地球を回す』相性が今ひとつなのに、なぜか伊坂作品を手にしてしまう……
『二人道成寺』歌舞伎の世界が舞台。妖艶さの中に、哀感が漂う。
『人のセックスを笑うな』よく分かりませんでした…以上。
『ウルティマ、ぼくに大地の教えを』アメリカ南部、少年が無垢でいられた最後の日々がつづられていく。時代を経て引き継がれてゆくものと、喪われるものとの二つが立ちはだかる中を生きていく少年が清らか。メキシコ系作家の小説だけに、アメリカの社会にはこんな一面があるんだと興味深かった。
『黄泉路の犬』愛らしい表紙や、軽いタッチとは裏腹に、なかなか複雑な気分になる題材だった。
『愚者のエンドロール』“古典部シリーズ”の2作目。お気に入りキャラに、もう少し活躍してほしかった。
『卒業』電車で読むには適さない一冊だと痛感。夢中になりすぎて一駅乗り過ごすし、花粉症のふりをして鼻をすすらなくちゃいけいないし……。
posted by あんく at 00:54| Comment(0) | TrackBack(1) | ○月の本読み | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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